これらの文章は、2002年から2003年の岩手日報コラムに連載されたものです。
今でもとても面白く読めましたので、再掲載しました。 ぜひ、ご一読ください。
第26回 運動不足は病気の元岩手医科大学第二内科・循環器医療センター 《運動不足は病気の元》現代に生きる人々は、交通機関の発達によって短時間のうちに遠方にまで移動することが可能になりました。仕事の上でも余暇を利用する上でもずいぶん便利になりました。 しかし、これがライフスタイルを変えてしまい、運動不足という新しい病気の元を生み出してしまいました。 糖尿病や高血圧などのいわゆる生活習慣病には、運動不足が大きく関わっています。健康な人でも運動習慣のない人は、ある人に比べて寿命が短いことが明らかにされています。 《具体的な運動の方法》運動の種類としては、重量挙げのように一部の筋肉だけを使う運動よりも、サイクリングやジョギングなどの全身運動が良いとされています。特に屋外での歩行(散歩)は誰にでも行えて費用もかからず、良い運動方法と思われます。 ただ適当な運動の強さには個人差があります。通常は運動中の脈拍数を数えることにより、運動の強さを知ることができます(六秒間の脈拍数をはかって十倍して一分間の脈拍数に換算します)。 無理のない適当な運動を行った時の脈拍数は、年齢から求めることが可能で「適当な運動時の脈拍数=165−年齢」という式で表わせます。 もちろん、自覚症状も適当な運動の強さを決める重要なポイントです。健康増進を目的にするような運動では、少し息が弾む程度の範囲にとどめるべきで、運動しながら会話ができるくらいの余裕が必要です。 このような運動を週に3日以上続けることが必要だといわれています。苦痛を伴い、翌日まで疲労を持ち越すような運動はお勧めできません。 1日の運動時間は、30分前後が望ましいとされており、歩行距離は、おおむね2キロ前後になるようです。ただ、一度に30分間行う必要はなく、10分間の運動を3回に分けても効果に違いはありません。 したがって歩いて勤務先や買い物に行くなどのちょっとした心掛けで、運動不足はたちまち解消されるのです。 《心臓の悪い人も運動を》心臓はからだ全体に血液を送り出すポンプです。いろいろな病気が原因でこのポンプの働きが悪くなり、息切れやむくみなどの症状が現われた状態が心不全ということをお話してきました。 今までは薬や手術などで心不全がコントロールされた患者さんには、心臓に負担をかけないようにと、その後も安静や運動制限を指導してきました。 しかし、運動によって筋肉が鍛えられ、しっかりとした足取りで歩けるようになると心臓の負担が軽くなります。また運動により自律神経のバランスも良くなるため、心臓の悪い患者さんにも運動を勧める動きがあります。 ただ実際に患者さんが運動を始める場合には、どのような運動を、どれくらいの時間、どれくらいの頻度で行なえば良いのかを、専門の先生と事前に十分相談することが大切です。 《運動不足という病気の元》運動不足は心臓病を引き起こす病気の元と考えられます。しかし、これは本人の心掛け次第で、すぐに治せるという特徴もあります。適当な運動には病気を予防するだけでなく、ストレス解消などのメリットも少なくありません。 間もなくお彼岸を迎え、岩手もこれから徐々に暖かくなってきます。さあ、近くの公園まで散歩に出かけてみましょう。 第26回 掲載:2003年3月18日 当ページは岩手日報社の許可を得て掲載しています。 |