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「心臓と暮らし」タイトル

これらの文章は、2002年から2003年の岩手日報コラムに連載されたものです。
今でもとても面白く読めましたので、再掲載しました。  ぜひ、ご一読ください。



第16回 「いのち」を救う下準備として心肺蘇生法を覚えよう

岩手医科大学第二内科・循環器医療センター
菊地 研


「いのち」 を救う下準備として心肺蘇生法を覚えよう

暮らしを大事にする生き方は、暮らしの順調さを喜ぶとともに、そこに危うさもあることを感じ取ることが出発点です。心臓は日々の暮らしのために休まず律儀に働きます。たとえ弱った心臓でも、そのとき身体が欲しがるだけの血液を無理してでも送りだそうと頑張るのです。しかし、心臓発作で突然に 「いのち」 を失いかねない危うさもあるのです。
万が一、心臓発作で心臓が突然止まったときには、救急隊員を待つだけでは手遅れになります。そのままにしていると、4分後には脳細胞が死んでしまいます。日本の救急隊員は平均6分で駆けつけてくれますが、この僅かな2分間が生死を決める大きな差なのです。そのため、「いのち」を救う下準備として心肺蘇生法を覚えておく必要があります。心臓が突然停止する発作の4分の3は自宅で起こっています。大切な人の 「いのち」 を救えるのは、その場に居合わせる 「あなた」 なのです。

市民の誰もが容易にできるように、心肺蘇生法は非常に簡単なものに作りなおされました。

1. 倒れている成人をみたら、意識があるかどうか確かめます。肩をたたきながら、声をかけます。

2. 意識がなければ、協力者を求めて、直ちに救急隊へ通報します。

3. あご先を挙げて空気の通り道を確保しながら、自発呼吸があるかどうかを確認します。

4. 自発呼吸がなければ、人工呼吸を行います。口と口をあわせて2秒かけて軽く胸がふくらむ程度に2回吹き込みます。

5. この2回の人工呼吸に反応して、息をするか、咳をするか、体を動かすかという 「血液循環のサイン」 の有無をみます。これがなければ、心臓が停止していると判断します。

6. (頸動脈の拍動を確認することは、心肺蘇生法の中で最も難しいものでしたので、省略されました。ただし、医療従事者は従来通りに頸動脈の拍動を確認します)。

心臓マッサージ

7. 血液循環のサインがなければ、心臓マッサージを行います。左右の乳首を結んだ線上の胸部中央に自分の片手を置き、もう一方の手を重ねて指を組み(図1)、手がそこからずれないようにし、肘をまっすぐに伸ばして自分の体重をかけるようにして、3.5 - 5cm圧迫します。 1分間に100回の速さで、1,2,3,・・と数えながら、15回心臓マッサージを行います。

8. 人工呼吸2回、心臓マッサージ15回を1サイクルとして、1分間に4サイクル行います。自分一人で行うときも、協力者がいて二人で行うときも同じです。血液循環のサインが現れなければ、救急隊に引き継ぐまで心肺蘇生法を続けます。

9. また、口対口での人工呼吸を省いた心臓マッサージだけの心肺蘇生法も、ある程度有効です。

岩手県では1993年から「県民運動としての心肺蘇生法普及事業」を開始し、全国に先駆けて県内で統一した心肺蘇生法の普及を図ってきました。蘇生法の受講者が増加するにつれ、倒れた人のそばに居合わせた人が心肺蘇生法を行う割合は増加してきて、この値は全国平均の2 -3倍にもなっています(図2)。心臓発作で心臓が突然停止して救命救急センターへ運ばれてきた人のうち、蘇生されて無事に退院できるのは、今の日本では2 - 3%ですが、きちんとした処置がなされていれば、「いのち」 が助かるのは20 - 30%にもなります。

倒れた人のそばに居合わせた人が心肺蘇生法を行うなど、同じ地域で暮らす人たちがお互いに助け合って行う救命救急システムが頼りになるのです。

第16回 掲載:2002年12月24日

当ページは岩手日報社の許可を得て掲載しています。

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