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「心臓と暮らし」タイトル

これらの文章は、2002年から2003年の岩手日報コラムに連載されたものです。
今でもとても面白く読めましたので、再掲載しました。  ぜひ、ご一読ください。



第20回 心臓病の成れの果て 「心不全」

岩手医科大学第二内科
中村 元行


《心不全の二つのタイプ》

「心不全」と言う病名は、よく使われますので聞いたことがある方が多いと思います。簡単に説明すると 「心臓の働きの不良によりおこる身体の不具合」 ということができます。そのタイプには2つあります。その1つは急激に発症するタイプで、他方は慢性的に進行するタイプのものです。急激に起こるタイプはおもに急性心筋梗塞症によるものです。突然、重症な心筋梗塞を発症すると心臓のポンプ力が低下し、血圧低下によるショックや呼吸困難を生じ、即、生命の危機に陥ります。この急性心筋梗塞症については以前(2002年12月10?日号)のこの欄で詳しい説明がされていますので省略します。今回は、慢性的に進行する心不全についてお話いたします。

《心臓病の成れの果て》

「いろいろな心臓病の成れの果ての姿」 がこの慢性型の心不全ということができます。例えば、高血圧を放置することにより起こる心臓肥大、心臓の弁異常、先天的な心臓異常、心臓の動脈硬化による心臓障害、心臓の筋肉そのものの変性や障害によりおこる心臓病などさまざまな心疾患が原因でおこります。その症状は、胸が苦しいとか動悸などの心臓の症状のみでありません。前に述べたように心不全とは 「心臓の働きの不良によりおこる身体の不具合」 ですから、全身的な様々な症状が現れます。例えば、心臓のポンプ力が低下することによる脳の血流低下が集中力や気力の低下という神経症状として現れることもあります。また、体内の臓器の血流低下により疲れやすいとか尿量が低下するとか、足や顔面のむくみ、食欲不振などといった多様な症状でも現れます。しかし、これらの症状は、他のいろいろな病気でも現れますので鑑別が必要です。慢性心不全に特徴的な症状は、心臓のポンプ力低下により肺の血流がうっ鬱するため生ずる息切れや、これが進行したときに生ずる夜間の呼吸困難症状です。つまり、日中は少し動いただけでも息が 「ハカハカ」 し易く、夜間睡眠中に息が苦しくなり、横になっていられず起き上がらずにはいられなくなるという症状が出てきます。またさらに、慢性心不全の症状が強くなると、このような症状に悩まされるだけでなく、突然死や感染症などのために死亡する方が多くなります。

《内科的治療法》

慢性心不全の内科的治療法としては、まず塩分や水分の過剰摂取の注意や利尿薬のほか、慢性心不全状態による全身的なホルモンやその類似物質のアンバランスを是正するための薬剤があります。しかし、このような薬は慢性心不全の特効薬とは言えず、多数の患者さんで統計をとると有効性があった程度の薬です。さらにこの有効性は、主に欧米人で証明されたもので、その効果が日本人でも同様なのかどうかや薬剤間の副作用の問題や個人的あるいは社会的コスト問題に関しては十分な検討や議論はなされておらず問題が残されております。また、慢性心不全の進行で入院した人は、その後5年間で半分が亡くなるとされておりますが、最新の薬剤治療を受けてもその予後が著しく改善しているとはされておりません。

このようなことを考えると、もっとも重要なことは慢性心不全に陥らないための予防が重要と考えられます。そのための基本的な事がらやその知識は、この 「心臓とくらし」 欄で詳しく述べられてきております。しかし、高齢になると何らかの心臓病が知らず知らずのうちに生じ、慢性心不全に陥ることがあります。実際、70歳以上の高齢者では慢性心不全に罹る割合が急激に高くなるとされており、わが国などでもその早急な対策が重要と考えられています。そのため私たちを含め世界中の多くの研究グル−プは、慢性心不全やその高リスク群のスクリ−ニング法の研究開発に取り組んでおり、今後その早期発見と予防に大きな展開が期待されます。

第20回 掲載:2003年1月28日

当ページは岩手日報社の許可を得て掲載しています。

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