これらの文章は、2002年から2003年の岩手日報コラムに連載されたものです。
今でもとても面白く読めましたので、再掲載しました。 ぜひ、ご一読ください。
第3回 心臓を長もちさせる岩手医科大学第二内科 《心臓は律儀者》心臓は一生のうちに25億回も収縮と拡張を繰り返し、からだの隅々まで血液を送り出す働き者です。疲れたからといって5分間の休憩をとることはできません。5秒でも休んだらヒトは失神して倒れてしまいます。5分間休んだらあの世に往ってしまいます。ですから心臓は休まず、「律儀」 にせっせと働きます。こんなに休めない心臓いつかストライキをおこして止まるんじゃないかと心配したくなります。しかし、神様はもともとの心臓を丈夫に作りました。 《心臓は筋肉の塊》焼鳥屋でハツ(心臓)を食べたことのある人は判るでしょうがコリコリしています。普通の肉(筋肉)とは異なる食感があります。心臓は、まったく脂肪分のない高い密度の筋肉(横紋筋)で作られています。また、心臓の筋肉中には、この収縮を自動的に調節している刺激伝導系といわれる指令系も持っています。ですからちょっとくらいの無理は朝飯前で、運動中などなら一分間で120回も収縮することが出来ます。元来、心臓は丈夫なものなのです。私の恩師である生理学の教授は「心臓は130年間もつ」というのが持論でした。 《心臓の血管支配》しかし、心臓は筋肉のみで作られているものではありません。心臓は、簡単にいうと筋肉と血管で作られています。筋肉が収縮するためには血液(酸素や糖分)の補給が必要です。つまり、心臓を支配しているものは血管とも言えます。この血液の補給路が狭くなったり、詰まったりするとエネルギ-が補給されず心臓筋は収縮運動が出来なくなります。 この状態が一過性で戻るようであれば狭心症といい、心筋が変質(壊死)し、収縮できなくなれば心筋梗塞症といいます。医学用語では虚血性心疾患とか冠動脈疾患とも呼ばれます。この病気は突然起き生死に関わることがありますが、いつとはなしに起きていることもあります。このような状態になると心臓は無理が出来なくなり律儀に働かなくなります。ですから 「心臓を長もち」 させるための一つの大切なコツは、「心臓の血管(冠状動脈)をきれいに保つ」 ことです。 《長もちさせるコツ》「ヒトは血管ととも老いる」 といわれており、血管をきれいに完璧に保つことは現在の医学では不可能です。しかし、逆に血管を 「いためる」 のは簡単です。たとえば、食塩を沢山摂り 「高めの血圧」 を放置し、カロリーの高いものを沢山食べ 「糖尿の気」 や 「肥満」 を放置し、「タバコ」 を吸いつづけ、「高めの血中コレステロールや中性脂肪」 を維持しつづけることです。例えば50-60歳の男性で 「高血圧」 「糖尿病」 「タバコ」 「高コレステロール血症」 の全てがある場合は10年間で心臓発作をおこす危険性はこれらのない場合の約4倍(相対危険度)とする報告もあります。女性の場合はその発症者の絶対数は少なくなりますが相対危険度は大きくなるものと考えられています。つまり、現在のところ、これらの因子をできるだけ是正する心がけが 「血管をきれいに保つ」 ということになるため、結果的に 「心臓を長もち」 させるコツであると言えましょう。その具体的な考え方や注意点は来週以降にお伝えします。 第3回 掲載:2002年9月24日 当ページは岩手日報社の許可を得て掲載しています。 |