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これらの文章は、2002年から2003年の岩手日報コラムに連載されたものです。
今でもとても面白く読めましたので、再掲載しました。  ぜひ、ご一読ください。



第12回 児童・生徒の心臓検診

岩手医科大学第二内科・循環器医療センター
那須 雅孝


《児童・生徒の心臓検診》

すべての子どもが健やかに成長することは、家族だけでなく社会の望みです。これを達成するための検診システムの一つに学校検診があります。今回は県内の学校心臓検診のあらましを紹介します。

学校心臓検診は、いうまでもなく心疾患を早期に発見し、適切な指導や治療によって学校生活だけでなく、生涯をできるだけ健康な生活を送れるように援助することを目的としています。

《県内の学校心臓検診の現状》

県内では毎年約5万人の児童・生徒が学校心臓検診を受けています。一次検診では全員にアンケートによる病状の調査と心電図(場合によっては心音図)、学校医による診察が行われます

二次検診は所見を有する児童・生徒が対象となり、専門医の診察を受けます。この結果、精密検査が必要と判断された児童・生徒が医療機関での精密検査を受け、ここで心臓に関する管理区分が決定されます

本県では全体の一割強の人が二次検診を受け、さらにその10−20%が医療機関での三次検診を受けています。最終的には手術や薬物療法といった医療を必要(要医療)とするのは年間10人以下です。「様子をみましょう」という要経過観察の対象者は250 - 350人(約0.7%)です(「県予防医学協会創立30周年危険度高い病気発見記念誌」=平成14年発行)。

《児童・生徒の突然死をなくしたい》

心臓検診の結果でもっとも痛ましいのは、検診を受けていたのにもかかわらず突然死する子どもがいることです。

平成元年度から13年度までに児童・生徒の心臓急死は13人(年平均0.002%)で、この中で学校心臓検診で管理が必要とされていたのは4人でした。学年は小学校六年生から高校2年生にわたり、もっとも多いのは高校1年生でした。

こうした事故は5、6月に起きやすく、しばしば運動(体育の授業、クラブ活動など)に関係して発生しています。

超音波診断法を導入した心臓検診

児童・生徒の心臓急死の危険が高い病気として特発性心筋症、心筋炎、冠動脈の異常(生まれつきや川崎病による冠動脈病変を持つ場合など)、重篤な不整脈(頻拍発作を持つWPW症候群、心室頻拍症、QT延長症候群、重篤な心室性期外収縮、完全房室ブロックなど)などがあります

これらによる急死の危険度の大小は、自分の症状や外見では分からないことも多いのです。しかし、これらの危険度の高い病気を見つけさえすれば、治療や生活指導によって多くは突然死を防止できるはずです。ここに学校心臓検診の最も大きな意義があります。

《これからの学校心臓検診》

このような現状から突然死を予防するという点では中学校1年、高校1年時の検診が重要と考えられます。

先に述べた心臓急死の危険度の高い疾患の中でも特に突発性心筋症と重篤な不整脈が検診のターゲットです。しかし、全く従来の検診法では検出されないことも多いため、超音波診断法や運動負荷心電図法などが導入されています。

《大切な検診後の健康管理》

学校検診に限らず、すべての検診では検診後の健康管理が大切なことはいうまでもありません。検診結果(管理区分)に基づいた正しい健康管理や治療によって発病を食い止めたり、発病を先に延ばしたりすることができるのです

特に身体的、精神的に健やかに成長することが必要な児童・生徒にはことさら重要であり、家庭と学校、医療機関との協力は欠かせないものです。

第12回 掲載:2002年11月26日

当ページは岩手日報社の許可を得て掲載しています。

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