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これらの文章は、2002年から2003年の岩手日報コラムに連載されたものです。
今でもとても面白く読めましたので、再掲載しました。  ぜひ、ご一読ください。



第23回 閉塞性動脈硬化症

岩手医科大学第二内科
大平 篤志


[わが国でも急増する動脈硬化性疾患]

食生活の欧米化や人口構成の高齢化などによって動脈硬化症が増え、大血管や末梢血管の疾患は増加の一途を辿っています。昨年、循環器疾患で当科へ入院した約2200人の患者さんのうち、血管疾患が20%を占め、5年前に比べ2倍近い増加でした。 今回は、動脈硬化性の血管疾患の中でも頻度が高く、介護保険上の特定疾病の一つに定められた閉塞性動脈硬化症について紹介します。

[閉塞性動脈硬化症とは]

閉塞性動脈硬化症は、四肢(主に下肢)の動脈が動脈硬化により、狭窄または閉塞して慢性の循環障害をきたす病気です。高齢の男性に多く、喫煙や高血圧症や高脂血症や糖尿病ならびに肥満などが誘因になります。

[閉塞性動脈硬化症の症状]

軽症では無症状か、時に冷感やしびれ感をきたす程度です。中等症になると、ある一定の距離を歩いた際に、下肢の筋肉痛のために歩行を停止せざる得なくなり、数分休むとまた歩行が可能になるという症状、いわゆる間歇性跛行を生じます。本症の特徴的な症状であり、本症が「足の狭心症」ともいわれる所以です。さらに重症になると、安静にしていても下肢の疼痛を自覚したり、足に潰瘍や壊死がみられるようになります。

閉塞性動脈硬化症の症状

[閉塞性動脈硬化症の診断]

自覚症状と身体学的検査(主に触診)より、大よその診断が可能です。次に、四肢の血圧値から足関節血圧/上腕血圧比(ABPI)をみることで診断できます。最近では、四肢の血圧を自動的に同時に測定できる血圧脈波検査装置も普及しています。診断の確定には、超音波検査法や磁気共鳴画像診断法などの画像検査を用います。これらの検査法は、患者さんの身体に負担になることはほとんどありません。外科的治療を前提とする時には血管造影を行うことがあります。

[閉塞性動脈硬化症の治療では動脈硬化性合併疾患への対策も重要]

この病気の背景にある動脈硬化の危険因子への対策が大切です。日常生活で支障をきたさない症状の患者さんには、内科的治療を選択します。症状の強い中等症以上の患者さんには、主に外科的治療を考慮し、時には下肢切断を必要とすることもあります。

一方、本症は全身の動脈硬化症の一部分症であり、他の動脈硬化性疾患を合併することが多く、その予後は不良とされています。下肢症状が重症になるほど、予後も悪くなります。脳血管疾患や虚血性心疾患ならびに大動脈瘤破裂などによる血管障害が、死因の75%を占めるといいます。合併疾患が生命予後に大きく関わってきますので、「命に危険のない、足の病気」と思い込んでいてはいけません。生命予後の向上のためには、専門施設で、重篤な合併疾患を含めた本症の定期的な精査が重要です。

[閉塞性動脈硬化症の早期発見と早期治療の必要性]

閉塞性動脈硬化症の治療目標は、下肢症状の改善と生命予後の向上に尽きます。十分に対応するためには、合併疾患を含めた本症の早期発見と早期治療を実施できる診療システムが必要です。さらに、動脈硬化の進展前(早期)に本症を診断できる検査法を、現行の健康診断に早急に組み入れることが望まれます。

第23回 掲載:2003年2月25日

当ページは岩手日報社の許可を得て掲載しています。

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