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「心臓と暮らし」タイトル

これらの文章は、2002年から2003年の岩手日報コラムに連載されたものです。
今でもとても面白く読めましたので、再掲載しました。  ぜひ、ご一読ください。



第15回 急性心筋梗塞症の治療「再灌流療法から二次予防まで」

岩手医科大学第二内科・循環器医療センター
鈴木 知巳


《早期再灌流療法》

搬送されてきた急性心筋梗塞症患者さんは、冠疾患集中治療室(CCU)で治療されます。救急処置に並行して、再灌流療法が検討されます。

再灌流療法とは、梗塞部の閉塞している冠動脈を再開通させることにより、心筋梗塞のサイズを小さくする目的で行われます。欧米での研究で、この治療法には3割程の死亡率改善効果があることがわかっています。

再灌流療法は、胸痛の始まりからの時間が早ければ早いほどその効果が大きく、12時間以上経過するとほとんど効果がなくなります。発症後1 - 2時間以内に行われるのが、最も効果的です。

血管の再開通の方法には、血栓という血管内の血液の固まりを溶かす薬を注射する方法(血栓溶解療法)と、閉塞部を直接小さな風船を膨らませて拡大する方法(PTCA)とがあり、それぞれの患者さんの病態や施設の実状に応じて選択されています。最近では、両者を組み合わせたり、血栓を吸引する用具を使用したり、ステントという金属製のメッシュ状の筒を血管内に留置したりもします。

この治療が早期に成功すると、死亡率の改善の他に、心臓の機能を温存し、合併症を減らし、退院後の心臓の状態を良好に保つことができます。しかし、不成功例ではかえって予後が悪くなることや、早期に再閉塞したり、数カ月でまた細くなったり(再狭窄)、重篤な合併症を伴う治療であることも知っておく必要があります。

《心筋梗塞症の合併症と治療》

再灌流療法終了後またはその適応がない患者さんは、CCUでの集中治療が継続されます。心筋梗塞症の合併症である、不整脈、心不全およびショック、心破裂、梗塞後狭心症などの治療や予防が行われます。血管拡張薬といわれる薬を中心に、心筋保護に有効な薬が使用されます。

心不全患者さんには、心臓の収縮力を高める薬や、体にたまった水分を排出させる薬などが使われます。薬での治療が無効な場合は、人工呼吸器や補助循環装置(心臓の働きを助けるためのポンプ)が適用されます。しかし、重症の心原性ショックの患者さんの死亡率は、現在でも50%を超えます。

心破裂は、梗塞部の心筋がもろくなり、突然その部分が破けるものです。心室壁が裂けたものでは救命は困難です。心臓の中の壁が裂けたものは、緊急手術により助かることもあります。

最近の専門病院での心筋梗塞症の院内死亡率は10%前後になっていますが、高齢者や合併症をもつ患者さんでは急死例も多く、依然として死亡率は高いのです。

《退院にむけての準備と二次予防》

CCUでの治療後、一般病棟で心臓リハビリテーションが行われます。それとともに、心臓と体全体の機能評価が行われ、個々の患者さんの病態に合わせて、退院後の生活指導が行われます。

退院の次は・・・

ここで重要であるのが、二次予防と呼ばれる再発作の予防です。冠危険因子すべてについての是正が必要です。これまでの自身の生活習慣を見直さなければいけません。また、二次予防効果が認められている薬もあり、個々の患者さんの病態に合わせて処方されます。

医療スタッフがいろいろとお手伝いをしますが、重要であるのは、患者さん自身が病気について勉強して、今の自分の心臓と体の具合を把握しておくことです。

心筋梗塞症で弱った心臓でも、日々の暮らしの中で上手に使えば、調子よく長もちします。心臓病との付き合い方のコツを知っておくことが大事です。

第15回 掲載:2002年12月17日

当ページは岩手日報社の許可を得て掲載しています。

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