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「心臓と暮らし」タイトル

これらの文章は、2002年から2003年の岩手日報コラムに連載されたものです。
今でもとても面白く読めましたので、再掲載しました。  ぜひ、ご一読ください。



第4回 心臓の敵は高血圧だけ?

岩手医科大学第二内科
中村 元行


《高血圧なぜ問題?》

心臓を長もちさせる一つのコツとして 「高血圧」 をコントロ−ルすることが大切と考えられています。では高血圧はなぜ問題なのかを考えてみます。前回述べたように高血圧を放置しておくと動脈が傷んできます。いわゆる動脈硬化と言われるものです。つまり全身の動脈の弾力性(やわらかさ)が低下し硬くモロクなってきます。それが脳の血管でおこると脳梗塞や脳出血を起こす危険性が高くなります。心臓の血管(冠動脈)でおこると前回お話したように狭心症や心筋梗塞症の引き金になります。大動脈(胸から腹部の太い血管)でおこると大動脈瘤(コブ状)となり破裂の危険性がでてきます。脚の動脈でおこると血管が狭くなり、歩行時の脚の痛みが出現し、ひどくなると脚が壊死に陥ります。その他、高血圧を長い間放置していると心臓がオ−バ−ワークぎみとなるため心臓の壁(筋)が厚くなります。それが行過ぎると心臓の働きが低下し、心不全の原因となります。この様な一連の心臓と血管の異常をおこす原因として最も重要な因子が高血圧です。

《高血圧は大衆病?》

高血圧とは、最近の考え方では高い方の血圧(収縮期血圧)が140mmHg以上あるいは低い方の血圧(拡張期血圧)が90mmHg以上のどちらかであれば高血圧と定義されています。このような定義を用いると多くの方が高血圧に当てはまることになります。最近われわれが、調べた結果では40歳以上80歳未満のある地域の一般住民の4割以上が上記の基準値以上の血圧を示すか、あるいは高血圧治療を現在受けているという結果でした。この結果より、おそらく多くの方が高血圧と診断されていたり治療を受けているものと推定されます。ではこの大衆病ともいえる高血圧の人が高率で心臓発作や脳卒中に罹るのかといえばそうではありません。ほんのわずかな割合でしかありません。しかし、このような重篤な病気を発症する確率は小さくても、高血圧にさらされる期間が長くなると上記のような重篤な病気に陥る危険性(リスク)は明らかに高くなることが証明されています。

全部たたけ!

《血圧だけが敵?》

高血圧をどの程度まで下げるかについては個人差がありますが、上記の高血圧の基準値以下となるようにするのが良いと考えられています。血圧を下げるためには、薬以外は減塩が良く知られていますが、肥満を改善することも重要です。それでは、単に薬などで血圧を下げるだけで安心かというと、そうではありません。糖尿病、喫煙習慣、高コレステロール血症 (中性脂肪も含む)、肥満なども長い間に動脈傷害を引き起こし、結果的に心臓を損なう危険因子です。だから血圧だけを下げてもこのような因子を放置していれば、動脈硬化は進行し、結果的に冠動脈疾患で心臓ダメ−ジや脳卒中を引き起こす結果となります。せっかく高血圧で治療を受けていてもこれらを見過ごし (あるいは検査されていなかった) では片手落ちです。実際、高血圧治療を受けていてもこのような他の危険因子を放置していたり検査されていなかったりしたため心臓血管病になる方が少なからずあります。ですから 「心臓を長持ちさせる」 ためには高血圧以外にも、他の心臓血管病の危険因子 (糖尿病、タバコ、高コレステロ−ル、肥満) をチェックしたりコントロールする必要があります。

第4回 掲載:2002年10月1日

当ページは岩手日報社の許可を得て掲載しています。

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