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「心臓と暮らし」タイトル

これらの文章は、2002年から2003年の岩手日報コラムに連載されたものです。
今でもとても面白く読めましたので、再掲載しました。  ぜひ、ご一読ください。



第2回 知っておきたい心臓のしくみとはたらき

岩手医科大学第二内科・循環器医療センター
上嶋 健治


増えている心臓病

心臓病は日本人の3大死因の一つで、2割弱の方が心臓病で亡くなっています。これからも、老化や動脈硬化に関連した病気は征圧されにくいことが予測されています。心臓病は老化にも動脈硬化にも関係する病気ですから、なかなか厄介です。

心臓と冠動脈

しかし、心臓病は決して治療法のない不治の病ではありません。むしろ、早い時期に正しい診断がつけば、脳卒中やがんなどに比べて助かる確率が高く、後遺症の心配も少ない病気です。そのためには、心臓病ではどのような症状が出るのかを知っておかなくてはなりません。中でも、心臓のしくみとはたらきを知ることがその第一歩です。

心臓のしくみとはたらき

心臓は全身に血液を送り出すポンプです。脈をとってみて触れる度に心臓は収縮しています。日中にみなさんが働いている間はもちろん、夜に眠りについてからも心臓は休まず働き続けます。1分間に60回収縮するとしても、1日では約9万回も収縮しています。80年間にはおよそ25億回もその鼓動を刻み、まさに死ぬまで働き続ける臓器なのです。そして、心臓から全身に送り出された血液は、酸素や栄養を含み、身体のすみずみにまで行きわたります。また、全身から心臓に戻ってくる血液には、不要になった老廃物が多く含まれています。これらの老廃物は肺や肝臓や腎臓などの臓器で処理されます。しかし、心臓がこれらの臓器に血液を送り出せないと、その処理もうまく進みません。心臓が悪くなったために、呼吸が苦しくなったり、おしっこが出ずにむくんだりするのはこのためです。

心臓の働きが損なわれる時

心臓は全身に血液を送り出すポンプですが、自分自身にも血液を供給してやらねばその力を発揮できません。心臓が自分自身に血液を供給するための血管を冠動脈と言います。冠動脈には右冠動脈と左冠動脈の2本があり、左冠動脈は左前下行枝と左回旋枝という大きな枝にわかれ、心臓全体を冠状にぐるりと囲んでいるのでその名があります。この血管に障害が起きると、胸痛が生じたり、ポンプとしての役割がうまく果たせなくなったりします。これが冠動脈疾患とか虚血性心疾患と呼ばれる病気です。また、ポンプには水をうまく汲み上げて、汲み出せるように中に弁が仕組まれています。心臓も同じように、中に僧帽弁、大動脈弁、三尖弁、肺動脈弁という4つの弁が備わっています。この弁がうまく開かなかったり、閉じなかったりして、働きに異常が出るとやはりポンプとしてうまく働けません。これが弁膜疾患です。さらに、心臓は規則的な収縮と拡張を繰り返しています。このリズムが障害されることがあります。脈が乱れたり、速くなり過ぎたり、遅くなり過ぎたりすると、やはりポンプとしてうまく働けません。これが、不整脈と呼ばれるものです。もちろん、心臓の働きを損なう病気はこれ以外にも多くあります。しかし、元にある病気がなんであれ、心臓に無理をさせ続けて破綻をきたした状態がいわゆる心不全です。心臓にここまで無理をさせることは、是非さけたいものです。

長生きのこつは、休むことなく働く律義者の心臓にうまく手入れをして、順調に働き続けさせる点にある様です。

第2回 掲載:2002年9月17日

当ページは岩手日報社の許可を得て掲載しています。

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