Kokubu N et al. Impact of Percutaneous Cardiopulmonary Assisted Devices and Mild Hypothermia Therapy on Out-of-Hospital Cardiac Arrest in Patients from Multicenter Hypothermia Registry in Japan: J-PULSE-Hypo Registry (#262)
―― ご発表の研究の内容をご説明いただけますか。
Kokubu 今回は蘇生後に低体温療法を行った患者を対象に、心原性ショックが遷延してPCPSを使用し低体温療法を続行した群と使用しなかった群とで、患者背景、神経学的あるいは生命予後がどう異なるかを検討しました。PCPSは102例(23%)に使用されており、PCPSが使用されなかったのは350例(77%)でした。背景としてはPCPS群の方がACSの患者さんが多く、また血行動態が破綻している例が多く認められました。PCPS群での1カ月生存率は63.9%であり、PCPSを用いなくてはいけないような血行動態不良例でも、非常に良好なデータであったと言えます。1カ月の神経学的良好群(CPC1、2)の率は31.8%でした。さらに生存者のみでCPC1の率をサブ解析すると、CPC1の率は49.1%と63.4%となり、非PCPSとPCPS群では有意差が消失しました。PCPS群での神経学的予後の良好の寄与する因子を解析しますと、AEDの使用や、発症目撃が重要であることがわかりました。結論としては、PCPSを用いて低体温療法を続行しなければならないような厳しい蘇生後の状況下でも、30日の神経学的予後良好(CPC1,2)の率は31.8%であり、非常に良好な成績でした。以上の成績から、急性期をPCPSで乗り切ることができれば、低体温療法を行うことにより良好な神経学的予後が期待できることが明らかになったと言えます。
―― 血行動態が破綻した場合でも、その一時期を乗り切れればよいということでしょうか。
Kokubu そうですね、救命センター内で超急性期を乗り切ることが重要であると思います。PCPSを利用することで神経学的予後の改善に結びつけることが、今日では十分に可能になったと言えます。
―― この研究以前にも、PCPSを使用した場合の予後についてはわかっていたのですか。
Kokubu PCPSを使用した場合の予後についてはあまりわかっていなかったと思いますし、今回のデータはおそらく予想されたよりも良いデータだったのではないかと思います。血行動態が破綻しかかっている症例でさえ38%が神経学的予後良好であり、補助循環が必要な重症の患者さんの1/3以上が社会復帰できる可能性があるわけです。
―― PCPSは他の施設ではあまり使用されていないのではないでしょうか。循環動態が破綻していても、用いている施設は多くないような気がするのですが。
Kokubu 蘇生後の患者さんにまでPCPSを使用するかどうかはその施設の条件によりますが、このデータをみる限りは、蘇生を行うERでは全国的に使用していくべきであるといってよいと思います。
―― ありがとうございました。