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『ReSS Report 2010』番外編

Session 03 Dr Tahara, Yoshio


Tahara Y et al. Efficacy of Therapeutic Hypothermia for Out-of-Hospital Cardiac Arrest in Patients with Non-Ventricular Fibrillation; J-PULSE-Hypo Registry (#137)


―― 先生のご発表の概要について教えてください。

Tahara 現行のガイドラインでは、院外心停止蘇生後に意識障害が残存する患者さんについての低体温療法に関しては、最初にVFがあった場合には絶対に行うべきであるが、それ以外は可能であれば行ったほうがよいとされています。初期調律によって差があるわけですが、その根拠としてはVFについては十分に研究されているが、VF以外のリズムについてはまだ十分な研究が行われていないことが挙げられています。そこで日本からVF以外の患者さんのデータを出しましょうということになり、我々はJ-PULSE-Hypo Registryの5年間のデータを後ろ向きに検討してみることにしました。対象には452例が組み込まれました。J-PULSE-Hypo Registryは低体温療法を行った患者さんと行わなかった患者さんを集積した研究ではないので直接比較することはできないため、低体温を行わなかった患者さんのデータはSOS-KANTOから集めました。J-PULSE-Hypo RegistryとSOS-KANTOの患者さんを初期調律によりVF群、PEA(無脈性電気活動)群、asystole(心静止)群に分けて、予後を比較したところ、VFもVF以外も低体温療法を行ったほうが約3倍もCPC1〜2の転帰が良好でした。VFが最も良好で、条件によってはそれ以外の患者さん、つまりPEAやasystoleも良好であるという結果でした。すなわち、自己心拍が再開するまでの時間が早い、もしくはERに到着するまでに自己心拍が再開しているといった患者さんでは良好でした。したがって、PEAやasystoleでも低体温療法は行ったほうがよいであろうというのが我々の結論です。座長の先生も、「アメリカでは最初のリズムが何であれ、これからは低体温療法を行うべきということになるであろう」とのご意見でした。

―― その部分ではアメリカも日本も考え方に差はないわけですね。

Tahara ただ日本の現状ではasystoleの患者さんが多いですから、どのような症例であってもというわけにはいかないかもしれません。やはり目撃者がいて、病院到着までに自己心拍が再開しており意識障害が残存している例の場合は低体温療法を行うべきと考えてよいでしょう。

―― 意識レベルはどうだったのでしょうか。

Tahara 今回は入院時GCS 6以下の場合は行ったほうがよいという結果でした。

―― 今回の発表のポイントは患者選択の基準ですね。

Tahara そうですね。「絶対に行ったほうがよい」と規定される場合と「行ってもよい」と規定される場合とではモチベーションにずいぶん差がついてしまいますが、VF以外の患者さんでも条件が整えば「行うべきである」ことを忘れてはならないと思います。ガイドラインでは強く推奨されていなくても、病院に到着するまでに自己心拍が再開している症例では、最初のリズムが何であれ行うべきでしょう。

―― わかりました。ありがとうございました。


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