野々木 |
急性心筋梗塞の発症から受診するまでのこの遅れを解消するにはどうしたらいいのかということは、頭の痛いところですけれども、獨協医大のデータで10%強が発症から1時間以内に受診しているとのことで、受診までが結構早いと思うのですが、栃木では啓発活動とか何かやっているのですか。 |
菊地 |
先ほどの 「日本人は辛抱強い」 とのデータからすると、栃木県民は辛抱強くないってことですね(冗)。市民公開講座は、最近もやったばかりですけれども、「早く病院へ行こう」 とのテーマで毎年開催しています。でもまあ、近隣の方々が病院に親近感を感じてくれているように思います。病院が身近なのでしょうか。「何かあったら診てもらおう」 と、そういうことではないかと思います。 |
野々木 |
受診環境もいいのですか。 |
菊地 |
そうですね、受診環境もいいですね。周りに何もない。周りに大きな病院がない。だから、近くの人は何か困った症状があったら必ず大学病院に来る。そういうことかもしれません。 |
長尾 |
そういう、他に大きな病院がないようなところでは、救急の患者さんが1か所に集中して来る。救急患者さんのほうでも選ぶ必要がないわけですね。もちろん、救急搬送システムも上手くいっているということもあるのでしょうけれども・・・。 |
菊地 |
ええ。大学病院には、救急センターとは別に時間外救急外来を行っていて、その受け皿もあることがいいのかもしれません。 |
野々木 |
患者さんの受診が遅れる原因として幾つか話題が出ましたけれども、一番大きいのは患者さん自身の受診しようと決断することが遅れているということ、その決断を早くするためにはどうしたらいいかということになります。これは、やはり日本全体でアプローチをしないといけない課題ですね。先ほどアメリカの話が出てきましたけれども、キャンペーンだけでは駄目だと言われていますね。アメリカで行われたアラート研究の結果では、ニュースだとか、マスメディアを使ってキャンペーンをしても、非典型的な胸痛が増えるだけで、1つも実効が伴わなかったと報告されています。冊子だとかパンフレットとか、そういうものだけでは駄目なのですよ。なので、どうしたらよいか・・・。 |
菊地 |
非典型的な胸痛の受診者が増えることに伴って本物が増えた訳じゃないのですか?それとも、非典型的な胸痛の受診者が増えることで少ない医療資源を疲弊させて対応ができなくなって困ったという意味ですか? |
野々木 |
いや、本物が増えなかったのです。 |
菊地 |
え? 本物が増えないで、非典型的な胸痛発作の受診者だけが増えたのですか? |
野々木 |
そう。本物が増えないで実効が伴わなかったというので、単にキャンペーンだけではいけないということなのです。 |
安田 |
やはり受診が遅れる人たちというのは、女性であったり、高齢者であったり、糖尿病を患っている方だったり、症状自体も少し非典型的な方が多いと思いますし、あとは救急での受診を躊躇うような人たちでしょうね。 |
長尾 |
それなら、リスクのある、外来に来られている生活習慣病の人に対して、「こうなった場合はこうしたほうがいいですよ」 というような話をしておくことは有効かもしれませんね。 |