AEDを使う心肺蘇生法(CPR)ホームページ
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いのちをつなぐ ひとをつなぐ こころをつなぐ

新しい研究って、人との関係からアイディアが湧いたり、人との出会いから始まったりすることが結構多いよ。すべては人の縁ですね。
坂本 今、同時にやっている研究は、レーダーサークに関してですね。レーダーサークの研究はここ2年くらいずっとやっているんだ。

このモニターはすごく良くて、CPRをしている最中、胸骨圧迫をしている最中のモニター心電図波形からアーチファクトを消してくれて、VFをどれくらいの感度と特異度で見つけることができるかっていう基礎的な研究をしていて、かなり高い特異度で見られるということがわかってきた。

研究方法としてはレーダーサークと通常の心電図と両方装着して、救急センターに到着した瞬間の胸骨圧迫始める前の心電図を記録して、胸骨圧迫中の心電図を記録して、そのあと最初の2分後のリズムチェックの時の手を離したときの心電図を記録して、それを全部蓄積しといて、それを全部無作為化してうちの一色先生の教室(循環器内科)の不整脈屋さん5人にばらばらに見せて1個1個ずつ波形を読んでもらう。

要するに、患者の背景とか前後の波形とか一切なしでそのスリップだけ見てもらって、「これはVTかな」とか「これはVFと言える」とかさ、「これはAsystole」とか「これは判別不能」とかっていうのを判断してもらって、それを実際にその前後の波形と比較して当たってるかどうかということで判定している。

それで、VFの感度・特異度ともかなり高いという、科学的に信用できるデータになっているので、将来的にはAEDでショックの直前まで胸骨圧迫を行える、つまり解析のために「手を離してください」と言わなくてもいいAEDを作るための基礎実験になっているんで、何とかね、ものにしたいなって思っている。
菊地 アメリカのほうでそういう研究はすでに行われているんですか?
坂本 うん、ある。しのぎを削っているところ。ゾルとかメドトロだったかな、やっぱりそれぞれのメーカーで、胸骨圧迫中の心電図波形が拾えるように色々な方法でアーチファクトを消すという技術を開発しているみたい。そんなことは、こっそりじゃないけど、みんな競争しているみたい。だから、この間のAHA/ReSSでうちの発表が終わったあとに、ゾルとか向こうのAEDメーカーがみんな強い興味を示していた。

でも「これはどういう原理でどうなっている?」って聞かれても、実はわれわれも原理をあんまり説明できなくて、一緒に連れだって行ったレーダーサークの開発元の大日本住友製薬の技術の人が応対してくれた。彼がそれら全メーカーの人たちと名刺交換していたから、もしかしたら・・・。
菊地 提携するかもしれないですね。すごいことですね。
坂本 うん、その可能性は充分にある。レーダーサークの会社って製薬会社で、いわゆるモニター屋さんとか除細動器屋さんじゃないから高い技術は持ってるけど、自分たちで作るマーケットってそれ程大きくできなくて、今の日本光電とかフクダ電子とかフィリップスに対抗して「これから心電図モニターを何万台売りましょう」っていう会社じゃないから。

そういう面では彼らも技術が高く評価されれば、逆にその部分だけパテントとして技術提携しておくこともあるんじゃないかと思ってる。でも、それはもう俺の範囲を超えているから・・・。
菊地 なるほど。素晴らしいですね。でもね、どうして製薬会社である大日本住友がそんなモニター開発することになったんですか?
坂本 あれはね、俺が聞いた話では、もともと製薬会社だから薬の開発してるじゃない。で、小動物を使っていて、ネズミの心電図を取らなければならない。だけど、それはケージの中で走り回っているネズミの心電図をとるんで、そのアーチファクトを消す為の技術をいろいろ研究しているうちに出来たという風に聞いてる。
菊地 へ〜走ってるネズミの心電図ね・・・。
坂本 その後、ラボから出てきて人間にも応用できるんじゃないかって考えついたらしい。
菊地 それもまたすごいですね。それで、先生のところに研究の話が最初回ってきたんですか? どこに来たんですか?
坂本 いや、もともと俺ではなくてね、紹介してもらったのは慶応大学の鈴木先生っていう救急の先生から。偶然だったんだよ。

彼が大日本住友製薬さんと知り合いで・・・。慶応の鈴木君って循環器も専門なのかな? AHAも毎年必ず来てるし・・・。そのAHAがシカゴであったときに鈴木先生と「飯でも一緒に食いに行こうか」って言って、「今日、ちょっと知り合いと飯食いに行きますから、一緒に行きましょうか」って言われて、たまたま一緒に飯食いに行ったのさ。

その時に「こういうもんです」ってその方から名刺もらって、「こういう機械なんですけど、どうでしょう?」って言われて。「いや、面白いよ。ひょっとしたらCPRの現場で使えそうだから、うちでテストしてあげるよ」って言ったら、「じゃ、是非」ってそうなったの。たまたま彼の紹介で。

それで、データ取り始めたら、結構面白いデータ取れるんでさ、「よし、じゃあ、これかっちり研究ベースにしよう」ということになってさ・・・。
菊地 へ〜すごいですね。ドンドン広がっていったわけですね。
坂本 人の縁です。だから、鈴木先生に感謝しないといけないんだよ。そしたら、また全然別のところで野々木先生は野々木先生でモバイルテレメディシンとして使ってたんで。

ネットで「モバイルテレメディシン」を検索したら、このホームページにたどり着いて「こんなホームページあるんだ」って思わず読んじゃったんだけど、「なんだ、同じ器械を使ってるんだ」って思ったりしてさ。でも使う目的が救急車で搬送中のアーチファクト除去ってことでさ、そこはやっぱり循環器の医者と蘇生の救急の医者の興味の違いでさ、それはそれでいいんじゃないかと思ったりすんだけどさ。

そう思うとね、いろんなねぇ、新しい機械とか、新しい研究とかって、そういう人とのいろんな関係でたまたまアイディアが湧いたり、そういう出会いがあると始まったりするっていうことは結構多いよ。すべては人の縁ですね。
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シリーズ 「いのちをつなぐ ひとをつなぐ こころをつなぐ」 の第八回目は、帝京大学の坂本哲也先生にご登場いただきました。