Contents

  1. モダン・ベースボール
  2. 現実のERでは…
  3. 雨ニモマケズ、風ニモマケズ
  4. 「一般市民の、一般市民による、一般市民のための」除細動
  5. Chain of Survivalの最初の3つの輪
  6. 2005年から「AEDを使う心肺蘇生法」の県民運動を開始
  7.  岩手県をイーハトーブへ
  8. (参考文献)

Chain of Survivalの最初の3つの輪が重要

岩手県をイーハトーブへ

除細動を行うまでの時間を短縮させるには、「その場に居合わせた一般市民が除細動すること(PAD)」が絶対に不可欠です。それを推し進めるには一般市民への「AEDを使う心肺蘇生法」の普及とAED設置の充実が両輪となります。地域住民への「AEDを使う心肺蘇生法」の普及は長期にわたる計画によって可能となります。このとき、地域住民の「こころ」に響かせなければなりません。

「『こころ』が変われば、行動が変わる。行動が変われば、習慣が変わる。習慣が変われば、人格が変わる。人格が変われば、運命が変わる」。現在、ニューヨーク・ヤンキースの4番を務める松井選手の好きな言葉ですが、「こころ」が変わらなければ、「モダン・BLS」である「AEDを使う心肺蘇生法」の普及も意味を成しません。

倒れた人のそばに居合わせた人が「AEDを使う心肺蘇生法」を行うなど、同じ地域で暮らす人たちがお互いに助け合って行う救命救急システムが地域に浸透することで、心臓発作により「いのち」を失いつつある人を救命することが「偶然の出来事」でなく、死亡例がなくなるほど優れたものになるのです。

最近、アメリカのシアトルとその周辺の、老人ホームや養護施設、レクレーション施設、職場、警察、公共機関、学校、自宅などにAED475台を設置しました。4年間でこのAEDを用いて50件の処置が行われ、そのうち42件は一般市民による除細動が行われました。この50人のうち、25人が生存退院しています(50%)が、それ以上にビックリするのは、その場に居合わせた人が心肺蘇生法を行っていたのが全例(100%)だったということです。

現在、岩手県を含めて日本はほんの1、2歩踏み出したばかりです。岩手県では地域の社会資源の一環として、住民が自ら「AEDを使う心肺蘇生法」を行える救命救急システムを構築して「地域社会そのものが究極のCCU」となるように努力しているところです。県民運動開始時に作成した「温泉なら岩手県へ行こう。いつ、どこで倒れても、誰かが助けてくれるから」としたキャッチコピーの実現に向かっています。

さらに、宮沢賢治が「理想郷」の意味を込めて岩手県を「イーハトーブ」と名付けたように、その岩手県が、温泉だけでなく、ゴルフやスキーなどのリクリエーションや競技会、学会などの諸会議、勉強や仕事、健やかな子育てから穏やかな老後の生活まで、訪れ暮らすに心地のよい「イーハトーブ」になることを目指しています。

当ページは菊地先生の許可を得て掲載しています。

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