「一般市民の、一般市民による、一般市民のための」除細動ガイドライン2000を改訂するときに中心的な役割を担ったアメリカ心臓協会(AHA)はこれまでも、”Chain of Survival”(図4)に象徴される「いのち」をつなぐ救命システムの整備に多大な努力を費やしてきました。 突然に心臓が停止した人には、速やかに救急隊を要請する(Early Access)のと同時に、その場に居合わせた人が直ちに心肺蘇生法を施し(Early CPR)、迅速に電気的除細動(Early Defibrillation)を行い、的確かつ迅速な救命治療(Early Advanced Care)を行うことが必須です。 その中でもとりわけ、迅速に除細動することが重要です。突然生じる心停止の85%以上が「心室細動」という不整脈が原因なのです。心室細動が発生してから1分毎に救命の可能性は7〜10%減少していきます(図5)8)。 唯一有効な治療法は電気的除細動(電気ショック)だけですので、その除細動までの時間が救命率を左右することになります。早期除細動こそが「いのち」を救う「鍵」となるのです。 ガイドライン2000では、除細動を行うまでの時間を院外では5分以内、院内では3分以内と到達目標を設定しています。しかし、日本に限ったことではありませんが、現在の救急システムでは院外での5分以内の除細動は達成不可能です。 そこで、その場に居合わせた一般市民が除細動すること(Public Access Defibrillation;PAD)の重要性を強調しています。図4の”Chain of Survival”でも、2つ目の輪で心肺蘇生法を行ったその市民が3つ目の輪でAEDを用いて除細動する「PAD」を表現しています。「一般市民の、一般市民による、一般市民のための」除細動となるのです。 その場に居合わせた人が心肺蘇生法とともに、さらに一歩踏み込んで除細動を行うことが「AEDを使う心肺蘇生法」で、これまでの119番通報といわゆる心肺蘇生法を行うのみの「オールド・BLS」から、「モダン・BLS」に変わるのです。最初の2つの輪から3つの輪まで、この「救命の鎖の輪がつながる」ことで、多数例の救命が可能になります。 |