Contents

  1. モダン・ベースボール
  2. 現実のERでは…
  3. 雨ニモマケズ、風ニモマケズ
  4. 「一般市民の、一般市民による、一般市民のための」除細動
  5.  Chain of Survivalの最初の3つの輪
  6. 2005年から「AEDを使う心肺蘇生法」の県民運動を開始
  7. 岩手県をイーハトーブへ
  8. (参考文献)

心肺蘇生法の普及について -BLSとAED-

Chain of Survivalの最初の3つの輪

最近の2つの大きな研究で、院外での心停止例の救命率を改善させるには早期除細動が重要であると裏付けられました。

Public Access Defibrillation(PAD) Trialは前向き多施設共同研究で、ショッピングモール、ホテル、レクリエーション施設などの公共施設内の組織化された2万人の地域住民ボランティアが参加しました9)。各施設に、「心肺蘇生法のみ」または「AEDを用いた心肺蘇生法」の対応システムを無作為に割り当て、生存退院率を評価しました。

両群で治療を受けた院外心停止人は、公共の場での心停止の発現率や心停止時に目撃者がいた割合などに差は見られませんでした。2年間で「心肺蘇生法のみ」では心停止107例のうち生存15例であったのに比べ、「AEDを用いた心肺蘇生法」では心停止128例のうち生存30例と、生存退院率は2倍に上昇しました(相対危険度2.0、95%信頼区間1.07-3.77、p=0.03)。

Ontario Prehospital Advanced Life Support
(OPALS)trial
は、多施設共同研究で、二次救命処置(ACLS)の追加前12カ月間(早期除細動期間、n=1,391)およびACLS追加後36カ月間(ACLS追加期間、n=4,247)に計5,638例が登録されました10)

心停止から蘇生された後の入院率は「早期除細動期間」の10.9%に比べて「ACLS追加期間」では14.6%へ有意に上昇しました(p<0.001)が、生存退院率に差は見られませんでした(5.0%対5.1%、p=0.83)。ACLSに生存率への効果は認められませんでした(多変量オッズ比1.1、95% 信頼区間0.8 - 1.5)。

ACLSは、気管挿管および薬剤投与が行なえる点で非常に効果があると考えられていますが、院外心停止例へのACLSの効果を初めて評価したこの研究では、大規模集団、対照比較デザイン、多重解析法にもかかわらず、いずれのサブグループでもACLSに効果があるとの科学的根拠を見出すことはできませんでした。

一方で、心停止時の目撃(オッズ比4.4、95% 信頼区間3.1 - 6.4)、その場に居合わせた人による心肺蘇生法(オッズ比3.7、95% 信頼区間2.5 - 5.4)、8分以内の早期除細動(オッズ比3.4、95% 信頼区間1.4 - 8.4)は生存率の上昇に強力に相関していました。その結果、Chain of Survivalの最初の3つの輪(速やかな通報、早期心肺蘇生法、早期除細動)のそれぞれが個別に重要であることが裏付けられたのです。

当ページは菊地先生の許可を得て掲載しています。

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