雨ニモマケズ、風ニモマケズ「心臓発作は会議室で起こっているんじゃない。現場で起こっているんだ!」と、皆さんもお考えでしょう。岩手県では、心臓発作の「現場」から始まる救急システムを築こうと、県民運動として心肺蘇生法普及事業を開始してきました5)。 心肺蘇生法の手順は、現行のもの6, 7)とほとんど変わらないものへ全国に先駆けて統一させました。この「県民運動としての心肺蘇生法普及事業」は、全国都道府県では最もよく纏まっているもので、「雨ニモマケズ、風ニモマケズ」、地道にまじめに続けています。 この10年間で、受講者は順調に増加していきました(図3)。 2003年度には受講者がのべ40万人に到達し、「各世帯に一人の受講者」という県民運動開始当初の目標が達成されています。蘇生法の受講者が増加するにつれ、当高度救命救急センターへ搬送された、外傷などによるものでない心肺停止の人で、その場に居合わせた人が心肺蘇生法を行っていた率も増加してきました。 普及開始前の1993年には13%で全国平均の10%程度とほとんど変わらなかったものが、1998年には全国平均の3〜4倍にもなる42%へと有意に増加し、現在でも全国平均の2〜3倍を有しています。心肺停止となって搬送されて救命されるのは、5%に比べて岩手では幾分良好となりました。 しかし、統計学的な有意差には至っていません。全国から見た岩手県の地域格差も含めて、これまでの「オールド・BLS」では不十分なのです。 |