Contents

  1.  モダン・ベースボール
  2. 現実のERでは…
  3. 雨ニモマケズ、風ニモマケズ
  4. 「一般市民の、一般市民による、一般市民のための」除細動
  5. Chain of Survivalの最初の3つの輪
  6. 2005年から「AEDを使う心肺蘇生法」の県民運動を開始
  7. 岩手県をイーハトーブへ
  8. (参考文献)

心肺蘇生法の普及について -BLSとAED-

岩手医科大学救急医学 助手 菊地 研


モダン・ベースボール

ベーブルースってご存知ですか。アメリカ・メジャーリーグを代表する歴代のホームラン王です。現在、アメリカで大暴れしているゴジラ、松井選手が所属しているニューヨーク・ヤンキースの黄金時代を築いた英雄です。病気の少年と約束してホームランを打ったという伝記を小さいころに読んだ人も多いと思います。

その頃、1920年前後のホームランはたまたま起こる「偶然の出来事」と思われていたのですが、ベーブルースはホームランを次々とかっ飛ばし、量産しました。その当時は「野手の頭上を越え、野手が絶対に捕れないホームランで簡単に得点が入るのは、野球の醍醐味が薄れる。野手の間を狙い打つのがバッティングの基本」との考えが根強く、選手たちは野手の間を狙い打って安打を放っていました。

確かに、今年イチローが達成したシーズン最多安打記録のときに話題になった、歴代のシーズン安打数のベスト10はイチローを除くと1920年代前後の記録なのです。

ところが、大観衆はベーブルースがかっ飛ばすホームランに喝采を送り、ベースボールの華はホームランへと移っていきました。ベーブルースを境に「オールド・ベースボール」から「モダン・ベースボール」へ移っていったのでした。

心肺蘇生法も同様に、AED(自動体外式除細動器)の登場を境に変わっていきます。これまで心肺停止から救命させることはたまたま起こる「偶然の出来事」と思われていたものが、AEDにより心肺停止例が次々と救命されて社会復帰できるようになるのです。

一般市民が行えた一次救命処置(BLS)は、これまで、119番通報といわゆる心肺蘇生法を行うだけでしたが、これからはそれらに続いてAEDを用いて除細動ができるのです。日本でも、2004年7月1日に報道されたように、一般市民が除細動を行えることになり、「オールド・BLS」が、「AEDを使う心肺蘇生法」という「モダン・BLS」に変わるのです。

大観衆がホームランをかっ飛ばすベーブルースに喝采を送ったように、救命の華はAEDへと移っていくのです。これは「心肺蘇生と救急心血管治療のための国際ガイドライン(ガイドライン2000)」1)に沿って、世界中が普及に励んでいるものなのです。

当ページは菊地先生の許可を得て掲載しています。

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