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いのちをつなぐ ひとをつなぐ こころをつなぐ

麻酔科医は心肺蘇生法にもっと取り組むべきだ。
菊地

先生とこうして親しくさせていただくようになりまして、大変うれしく思っています。

私が2005年に栃木に異動して来てからも引き続きACLSとBLSを開催してきて、それらを通じて親しくさせていただくようになったわけですが、本日もお忙しいところ、今回のBLSとACLSコースの会場が自治医大ということで、お見えになっていただき感謝しています。

瀬尾

いやいや。こちらこそ。

瀬尾先生
菊地

先生は、現在、自治医科大学の麻酔・集中治療部門の主任教授をされていますが、こちらにいらしてもう長いんでしょうか?

瀬尾

ここに来てもう9年目。

その前は大宮医療センター(現 自治医科大学附属さいたま医療センター)に11年いて、実は大宮の方がまだ長いのよ。

菊地

同時に日本麻酔科学会の理事もされていますが、その先生から以前にメールをいただいたときに、「麻酔科医は心肺蘇生法にもっと取り組むべきだ。現状に危惧している」 とおっしゃっていましたけど、どういうところからそのように考えられるようになったんでしょうか?

瀬尾

我々の年代っていうのは、麻酔科に入った人たちが、救急に行ったりICUに行ったり手術室に残ったり、広がっていく時期だったわけです。

それからもう30数年たったんですけど、そうすると今度は細分化してしまって、麻酔科医であるのですが、ICUはICUの医者、救急は救急の医者、手術室は手術室の医者っていうようになってしまって、「専門しかやらない」 っていうようになってしまっている。


もともと心肺蘇生っていうのはピーター・サーファー先生が心肺脳蘇生として始めたもので、麻酔科医が始めているという認識を僕らは持っていたんですね。

20年くらい前だと、院内でね、心臓が止まったら呼ばれるのは僕ら麻酔科医だったりしたわけで、だから我々も一生懸命勉強して、処置をどうしたらいいかとか、薬の使い方どうしたらいいかということをやってたんです。


ですが、それがふと気がつくと、手術室で心臓が止まるというのは非常に少なくなった。

そのため、手術室だけで働く麻酔科医には、心肺蘇生というものが、あまり必要と感じなくなったというのがあるんじゃないか、と感じているわけです。

菊地

確かに、医学が進歩したおかげで麻酔での事故は減りましたので、その必要性を感じていないかもしれませんね。

瀬尾

それと、我々のところ(麻酔科学会)では指導医試験があるんですけど、心肺蘇生に関する実技試験で最近では指導医を受けるレベルでも常識を疑うようなことが起こっているんです。

胸骨圧迫心臓マッサージを平気で左胸部に行う受験者がいて、我々試験官がビックリしたんです。

もちろん、その受験者は不合格でしたけれど、もうちょっときちんと心肺蘇生について取り組まないといけないと、と痛切に感じています。

それともうひとつ、日本蘇生協議会(JRC)は、麻酔科学会、循環器学会、救急医学会、いろんなところが集まって構成しているんですけど、なんとなく麻酔科学会の活動というものが小さくなってると感じていて、やっぱり麻酔科学会、麻酔科医として心肺蘇生を見直さないといけないとも思っているんです。

菊地

それで今、具体的に考えられていることなどありますか?

瀬尾

麻酔科医みんながACLSの基本を知っているというふうにしたいなと。

もう少しきちんと勉強してもらいたくてBLS/ACLSを義務付けることも必要だと思っています。具体的には、指導医試験についてBLS/ACLSの講習を受けているということを受験要件にしたいなと考えています。

2010年ぐらいを目処に始めようと考えていますが、なかなか、ね。

菊地

循環器学会では、今年から専門医の受験要件にACLSコースの修了が入りました。

もちろん地域に根ざしたコースも積極的に開催していますが、必修化にあたり、受験予定者が困らないようにするために、過去の受験者数に応じたコースを最低限、開催してきています。

インストラクターでコースへ参加してくださっている方々には、専門医の更新のための10点がもらえています。

だから、インストラクターやってる人は専門医更新の点数がすっごく余るくらいになってるんです。

点数がほしくて、インストラクターになっている人はいないと思いますが、でもないよりはあったほうが、モチベーションが全然違うと思いますよ。

瀬尾

つまり、それは日本循環器学会が教育に力を入れてるってことだよね。

学会参加と同程度の重みをつけてるんだね。

麻酔科学会も見習ってそういうのをつけなくてはならない・・・。

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シリーズ 「いのちをつなぐ ひとをつなぐ こころをつなぐ」 の第六回目は、自治医科大学の瀬尾憲正先生にご登場いただきました。

瀬尾憲正先生の略歴

瀬尾憲正先生
1948年香川県生まれ。モットーは 「考える前に飛べ!」。
1974年京都大学医学部卒業。神戸市立中央市民病院、京都大学医学部麻酔学講座、同集中治療部を経て1988年自治医科大学附属大宮医療センターに勤務。同総合医学第二講座教授などを歴任。
2000年1月より自治医科大学麻酔科学講座教授、2001年10月同麻酔科学・集中治療医学講座主任教授に就任。現在に至る。

瀬尾憲正先生の著書