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いのちをつなぐ ひとをつなぐ こころをつなぐ

桶に溜まった水の高さを医療レベルとすると、桶の下のほうに穴が開いていたら、結局、そこの病院の医療水準はそこのレベル以上にはならない。
瀬尾

うん。今度は、アメリカは 「5M運動」 を開始する。

5Mですから、500万件。

つまり、その10万人の死亡の背後には、500万件の有害事象があって、結果的にそのうち10万人近くが死んでいるという。

だから今度は、この5M運動というのを起こして、有害事象そのものを減らそうと。

アメリカは、今度は有害事象の件数を減らすという形にもっていこうとしている。

菊地

へー、アメリカはすごいですね。

日本では、「日本版100K運動」 にはもうすでに多くの病院が参加してるんですか?

瀬尾

いや、まだまだ。5月の10何日かにキックオフ・フォーラムが開催されたばかりだから、これから。

アメリカでは、この運動に各病院が本当に参加するかなと疑問に思っていたんですけど、参加病院の入院患者数はアメリカ全入院患者の70数%ぐらい、入院患者の死亡者数はアメリカ全体の85%ぐらい占めるようになっている。

つまりこの運動はアメリカの全病院的な運動としてかなり拡がっている。

瀬尾先生
菊地

へー、それもスゴイですね。

瀬尾

アメリカでは、ね。

日本は病院数が9,000なんぼで、アメリカと比べて小さな病院が中心。

とりあえずだけど9,000の中の3,000病院に何らかの登録をしてもらう。

病院の規模に関係なしで、1/3ぐらいに登録してもらいたい。

有害事象を30万件減らして、1万人の死亡を減らそうというのが一応の目標。

まあできることから、かな。

菊地

日本でもアメリカと同じように月別死亡数をみるんですね?

瀬尾

そうそう。

日本では、その目標項目は8つあって、たとえば、

(1)誤薬、間違った薬の投与の予防

(2)周術期の肺血栓塞栓症の予防

(3)危険手技の予防、つまり、CVライン(中心静脈ライン)とか胃チューブを安全に入れる方法

(4)医療機器の誤作動、まず輸液ポンプの誤作動を予防する

(5)ラピッド・レスポンス・チームをきちんと作ろう

つまり、心臓が止まる前に早く処置をするような体制を作ろうとかね、その他、ある事象が起きたら原因を突き止めて改善に持っていこうとか、・・・。

この 「ラピッド・レスポンス・チーム」 に関しては、それ以前に、わが国では、病院の中にきちんとAEDが設置されているかどうか、院内の医療従事者がAEDをきちんと使えるかどうか、蘇生チームがあるかとか、「コードブルー」 のシステムがあるかとか、っていうのが、まだできてないだろうと。

だから、とりあえずラピッド・レスポンス・チームを作る前に、「AED」 システムとか 「コードブルー」 システムというのをまずキチンとやろう、と。

それが 「ラピッド・レスポンス・チームを作る」 という項目のミニマム・リクワイメント(最低必須要件)とした。

つまり、BLSをきちんとね、医療従事者以外の病院職員も含めて全員がBLSできるとかAEDを使えるとか、そういうようなとこから始めようということになった。

菊地

確かに 「ラピッド・レスポンス・チームを作る」 なんていう前に、今抱えている問題を解決しておかないといけないんですね。

院内でもBLSもやってないし、ACLSもやってないし。ましてAEDもない、なんてありますからね。

瀬尾

結局、肺塞栓症の予防でも何でも、大学病院とか公立病院っていうのは、まぁきちんとやっているかもしれないですけど、300床以下の中小病院、それが日本に非常に多いのですが、そこでは、「やらなければいけないということはわかっているけれども、やっぱりできない」 とか、「できないのは、どうしたらいいのかわからないから」 とかということがある。

それから、「ある診療科はやっているんだけど、別の診療科はやらない」 ということがよくあるので、これは病院全体としてやろうという形にしている。

登録はそのホームページからダウンロードして、必要事項を記入して申込みするんだけども、最終的には院長の申込み、院長のサイン、つまり病院としてやるんだということを提出してもらうことになっている。

医療安全運動って全部そうですけど、その病棟、そのセクションだけでやるだけでは絶対だめで、病院全体としてやらなきゃいけない。

つまり、桶がありますね、桶に溜まった水の高さを医療レベルとすると、桶の下のほうに穴が開いていたら、結局、そこの病院の医療水準はそこのレベル以上にはならない。

菊地

あ、どこかで聞いたことあります。確か木で作られた桶から水がこぼれていく・・・ような絵が書いてあって・・・。

瀬尾

うん、そう、リービッヒの最小律。

病院自体のレベルを底上げするというのが非常に重要。

昨日も講演会で 「100K運動」 のことやって、質疑・応答のときに 「肺塞栓症もやりたいんだけど、やっぱりやれない」 という意見があった。

その発言者が外勤で行ってる病院のことで、 そういうところだとやっぱりきちんとしてないみたいで、「何かうまくやらせる方法はないか?」 って言うんだよね。

「術前のスクリーニングもどうするか、その手順もどうするかとか、わからん」 って質問があったから、「だから、それはこういう運動に参加して、ハウツーガイドを参考にしてやってもらえばできます」 って答えたんだよ。

でも、実はまだハウツーガイド、まだアップロードしてないけど・・・。まだきちんと完成してないのよ。

今、整備しますよ。

菊地

はい、お待ちしております(笑)。

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シリーズ 「いのちをつなぐ ひとをつなぐ こころをつなぐ」 の第六回目は、自治医科大学の瀬尾憲正先生にご登場いただきました。