AEDを使う心肺蘇生法 トップ > いのちをつなぐ 目次 > 第六回 瀬尾憲正先生 > その7(最終回) 栃木から新たな心肺蘇生の風を起こそう。
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瀬尾 |
最近、オートパルスっていう心臓マッサージをする機械が承認されて使えるようになったけど、はかなり有効そうなので、栃木の救急車に搭載してその有効性を確認したいと思っています。
今、日本光電と金額的に交渉してるところ。実はオートパルスは自治医大の卒業生が開発に関与してるんですよ。
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菊地 |
そうみたいですね。
救急車全台に乗せるんですか? |
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瀬尾 |
いや、自治医大が地域メディカル・コントロールを担当している地区のうちの6台だけを考えています。
予算があったらの話ですが。鈴川先生に 「協力して」 って頼んだら、「それより救急救命士の挿管実習を早くして」 って言われて。
でも、今、気管挿管の重要度は下がっているよね。
それこそ、その挿管している間、何秒か何十秒間か知らないけど、心臓マッサージが中断されてしまう。
心臓マッサージをされているほうがいいのに・・・。
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菊地 |
気管挿管しながらでも、心臓マッサージし続けているとしても、救急隊は3人編成だから、1人は救急車の運転で、1人は気管挿管、1人は心臓マッサージで、完全に1人とられちゃうから大変。
それだったら機械(オートパルス)でやったほうがいい。
きちんと30対2でやりますしね。
胸部に巻いたベルトが30回ギュウギュウって締めて、人工呼吸2回分休んでその間に換気できるんですよ。
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瀬尾 |
日本では、オートパルスに関してどっかでデータをとってる?
坂本先生のグループ?
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菊地 |
はい、坂本先生がオートパルスを用いた搬送の研究をしています。
どこかで発表していると思いますよ。
確か、搬送時にオートパルスを用いた搬送とこれまで通り救急隊がCPRしながらの搬送で比較して、心臓マッサージの質を評価していたと思います。
日本の家屋の場合、狭くて階段があったりして、そういうところでは胸骨圧迫心臓マッサージが中断しているし、それ以外の所でもしっかり心臓マッサージをやっているように見えても、実際には胸骨圧迫の深さが浅いということがわかったって言っていましたね、確か。
ただ、日本での院外心停止に関して救命士さんが使って蘇生率どうかっていうデータはないんじゃないかなと思います。
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瀬尾 |
日本ではまだだけど、アメリカではすでにデータが出ていたよね。
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菊地 |
ええ。確かVFだと心拍再開率はあまり変わらないけど、心静止だかPEAだとオートパルス群ではちょっと高いという報告だったと思うんですよね。
でも、これに関しても、色々研究のリミテーションがあるようですよ。
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瀬尾 |
日本の家屋は狭くかつ高いから、心臓マッサージの中断時間がどうしても長くなるから、オートパルスは有効だと思うね。
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菊地 |
ええ。すごくいいと思うんですよね。
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瀬尾 |
これもそうだし、小学生へのCPR教育に関してもそうだけど、「栃木から新たな心肺蘇生の風を起こそう」 ということで色々やってみたいよね。
栃木県の人口が200万人。人数的、人口的にちょうどいいんじゃないかと思って。組織の大きさ的にも動きやすいから。
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菊地 |
僕も大賛成です。
確かに、東京とか大阪とか病院がものすごくたくさんあるせいで、コントロールしにくいところに比べればいいと思います。
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瀬尾 |
どっかに予算ないかな? 色々やろうと思ったら、研究資金が必要になるよね。
再来年(2010年)に日本蘇生学会の会長を務めることにもなったので、例えば蘇生学会に寄付してもらって。委託研究みたいなのでもいいんじゃない?
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菊地 |
ええ。是非お願いします。寄付してもらえればいいですが、ただ、景気があまり良くないから、企業も寄付してくれるかどうかはちょっと難しいかもしれないですね。
でも、それとは別に是非とも栃木から発信していきましょう。引き続きよろしくお願いします。
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シリーズ 「いのちをつなぐ ひとをつなぐ こころをつなぐ」 の第六回目は、自治医科大学の瀬尾憲正先生にご登場いただきました。