AEDを使う心肺蘇生法 トップ > いのちをつなぐ 目次 > 第六回 瀬尾憲正先生 > その5 この「100K運動」は医療というものへの見方を変えられるんじゃないかと思っている。
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瀬尾 |
それともうひとつ。
医療従事者と患者が協力してやろうという項目もあって、たとえば病院内に図書館を作ろうという運動もその中に入っています。
だから、「図書館を作るという運動に参加します」 と手を挙げれば、「こういう風にしたらその図書館が作れますよ」 とNGOだったかが協力してくれるようになっているんです。
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菊地 |
えっ、図書館ですか? 図書館っていうことは、患者さんが勉強するための? 患者さんが病院から色々情報を得られるように? そういうことですか?
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瀬尾 |
そうそう。
そこで、患者さんが病気に関する本を読んだり、勉強したりしてもらう。
僕らが言っても、分かったふりをしているけと、きっとわかっていない難しい言葉とか。
でも、そのような言葉を我々がまたいちいちいちいち全部説明してたら、時間がないでしょ?
だから、「これについて、もうちょっと詳しいことを知りたいというんだったら、あそこに図書室がありますから」 って。
患者さんも今まではどちらかというと、「医者にお任せで」 っていう感じだったじゃない。
それを止めて協力してやろうということも 「医療の安全」 には非常に重要なことだと思うよ。
患者が自ら気づいたときに 「これ、おかしい」 と言う。
それが医療安全にも大切。
そういう意味でも 「100K運動を推進しよう」 という話になる。
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菊地 |
へー。「図書館作る」 っていうのはびっくりしました。
ユニークですね。
インターネットも含めてっていうことなんでしょうね。
すごいですよね。
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瀬尾 |
だからそれをやるとしたら、いろんな病気の治療はそれぞれの病院である程度標準化してないといけなくなるかもわからないね。
図書館で情報公開するということになるから。
だから、この 「100K運動」 は医療というものへの見方を変えられるんじゃないかと思っている。
つまり、患者にとって良くないことが起こった場合、患者にとってはミスがあったかなかったかという問題ではない。
でも、現状だと訴訟になれば、医者側はミスがないということを証明しようとするし、患者・遺族側はミスがあったということを証明しなくてはならないわけでしょう。
裁判はミスがあったかどうかで戦うことになって、どちら一方が勝って win ということになるけれども、どっちにとっても不幸というか、何も変わらない、再発防止につながらない。
両方が win-win になるためには、お互いに協力して、つまり改善という方向に持っていかないといけない。
医療は医者と患者が協力して行うもの。医師にも、患者にも、責任と義務がある。
だからそういう意味で、医療全体に対する見方を変えようという運動は非常にいいことと思う。
こういう運動に患者さん側は乗ってくるかどうかなんですよ。
今までは 「何でも上手くいかなかったら、全部医者のせいだと言い切ったらいい」 という考えだったのではないかな。
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菊地 |
このホームページの漢那先生のお話のときにもちょっと載ってますけど、「安全・安心の医療」 とか、「パラダイムシフト」 というところで患者さん主導で選択するという感じの話題が出ていましたけども、患者さん自身も 「自分にも責任がある」 っていうふうに今まで思っていなかったと思うんですよね。
「全部医者に任せて、医者が全部責任を取る」 って感じでしたけれども、そうではないですよね。
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瀬尾 |
「患者さんが選ぶ」 というのは、つまりその選んだほうにも責任があるということなんでしょう。
今は、日本では何かというと 「同意書」 を記載するように言われていますが、同意書というのは何か医者側が押し付けて、患者側がしぶしぶ書きましたみたいな感じになってるけど、僕らは違う。
患者側から 「麻酔依頼書」 というのを僕らはもらう。
患者さんから麻酔を依頼してもらう。
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菊地 |
えっ、そうなんですか?
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瀬尾 |
自治医大の麻酔科ではね、「麻酔依頼書」 っていうのを頂いている。
患者さんが 「麻酔科医から危険性を話してもらいました。だから麻酔をお願いします」 っていう事で依頼書を書いて、麻酔科医が 「じゃあやりましょう」 というふうにしている。
麻酔という処置は、僕らがやりたくてやっているわけじゃない。
だっておかしいよ、手術もそうだよ。
本当は 「手術依頼書」 でいいよ。
外科医の説明を受けて、患者さんが「この手術をしてほしい」と。
で、外科医が 「じゃあわかりました。引き受けましょう」 って話だと思うよ。
だから 「手術同意書」 っておかしい。
外科の先生も手術したいからするんじゃないよね。
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菊地 |
そうですね、確かに。
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瀬尾 |
みんな発想を変えてほしい。
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シリーズ 「いのちをつなぐ ひとをつなぐ こころをつなぐ」 の第六回目は、自治医科大学の瀬尾憲正先生にご登場いただきました。