日本での心肺蘇生ガイドライン2010の作成は・・・


獨協医科大学 心臓・血管内科 菊地研


2010年の国際コンセンサス(CoSTR)は2010年10月に発表される予定ですが、日本での心肺蘇生ガイドライン2010はどうなっているのでしょう。

心肺蘇生・救急医療に関係している方ならどなたもご存知と思いますが、2009年3月に国際蘇生連絡協議会(ILCOR)の会議が大阪で開催されました。
2010年の国際コンセンサス(CoSTR)作成に関する会議で、アジアで初の ILCOR会議でした。
というのも、2006年に日本蘇生協議会(JRC)がアジア蘇生協議会(RCA)としてILCORへの加盟が成立したことから可能になったことなのでした。
このILCOR会議は成功裏に終了し、2009年はJRCおよび日本の国際的な評価が定まった記念すべき年となりました。
引き続きJRC参画学会から20名以上のワークシート作成者がCoSTR 2010改訂へ参加し、JRCもCoSTR 2010の編集委員を担うなどアジアの代表としても成果をあげています。

現在、日本の状況は2000年や2005年当時とは全く変わっています。
CoSTR 2005が発表された2005年当時、日本はILCORに加盟できていませんでしたので、CoSTR 2005が世界に向けて発表されるまでその内容を全く知ることができませんでした。
一方、すでにILCORに加盟していたヨーロッパ(ERC)やアメリカ(AHA)の団体は、発表前にもCoSTR 2005の内容を閲覧できたため、CoSTR 2005の発表と同時に自地域のガイドラインを発表することができました。
このため、日本は、CoSTR 2005やそれらガイドライン2005の発表に遅れて、これまでと同様に日本救急医療財団が 「日本版心肺蘇生法指針」 を作成することになりました。
ところが、2006年にILCORに加盟できた日本は、今回のCoSTR 2010では、2010年3月から10月までの守秘義務期間にも、その内容を他のILCOR加盟団体と同等に閲覧可能となります。
前もってガイドライン作成の準備ができ、CoSTR 2010発表と同時にガイドライン2010を発表することができるようになるのです。
ですが、言い換えれば、日本がILCORへ加盟したということは、同時にJRCが日本版ガイドライン2010を作成する責任と義務も生じることを意味しています。
同様にRCAがアジア版ガイドライン2010を作成する責任と義務を生じることも意味しています。

最近、JRCは、CoSTR 2010に基づく日本版ガイドラインを作成するにあたり、「心肺蘇生と救急心血管治療のためのガイドライン2010」 作成委員会を立ち上げました。
この 「心肺蘇生ガイドライン2010」 作成委員会はCoSTRワークシート作成者とJRC参画学会からの推薦者で構成されています。
さらに、日本救急医療財団日本版救急蘇生ガイドライン策定小委員会と合同委員会を設けて、国内の統一と整合性をはかろうとしています。
RCAによるアジア版ガイドライン作成に関しては、JRCが先鞭をつけて作成した日本版ガイドラインをもとにRCA加盟各国がアジア地域のガイドラインに集約できるか検討することで話が進んでいるようです。
この日本の 「心肺蘇生ガイドライン2010」 は、日本国内だけでなく、アジアおよび世界へと国際発信していくことになります。
JRCは国内外で重要な役割を担っているということです。

2009年11月

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