救急蘇生国際ガイドライン2010に向けて。


日本心臓病学会 2009年9月

パネルディスカッション4

心原性心停止の実態と対策:
救急蘇生国際ガイドライン2010に向けて


院外心停止例の救命率は,心肺蘇生法や自動体外式除細動器(AED)の普及により改善傾向にあるが,依然として低いままである。パネルディスカッションでは,院外心停止の50%以上を占める心原性心停止からの心肺蘇生をめぐり,日本のエビデンスが発表され、国際ガイドラインへの発信への展開が報告される。

京都大学 石見 拓氏は,日本からの発信によりAHAのガイドライン勧告がなされた“hands-only CPR” 人工呼吸を行わない胸骨圧迫のみによる蘇生法への期待と今後の展望について発表する。

続いて国立循環器病センター 横山 広行氏は,救急搬送中の心電図,血圧,呼吸,脈拍などのデータや映像を,第3世代移動体通信を用いた標準的なインターネットにより病院側に送信するモバイルテレメディシンシステムが循環器救急医療に有効であることを示す。

一方, 東北大学 安田 聡氏は,我が国で開発された3群抗不整脈薬であるニフェカラントの電気的除細動抵抗性の心室細動に対する有用性を示唆する多施設共同レジストリ研究について報告し、アミオダロンとの比較の上、国際発信の重要性について言及する。 横浜市大 田原 良雄氏は,院外心停止例に対する経皮的心肺補助装置(PCPS)による蘇生方法(e-CPR)について多施設共同研究における無作為比較試験について報告を行う。

また,小倉記念病院白井 伸一 氏らは,心停止を合併した急性冠症候群に対する経皮的冠動脈形成術(PCI)と低体温療法の併用について、我が国がリードする領域でのエビデンス発信について、J-PULSE-Hypoによる多施設共同登録試験も含め報告する。札幌医大 長谷 守 氏は,クーリングブランケットを用いた低体温療法の有効性や問題点について,日本大学 渡辺和宏氏は,低体温療法を併用したPCPSの評価指標として超音波法による経時的観察が有用であることを示す前向き研究についてそれぞれ発表する。

心肺蘇生法や救急心血管治療を巡っては,国際蘇生連絡委員会(ILCOR)が科学的エビデンスにもとづく国際コンセンサスCoSTRを5年ごとに発表しており,これをもとに各国のガイドラインが作成されている。2010年の改訂に、我が国から20名以上の専門家が参画している。座長の1人である国立循環器病センター野々木宏氏は,本セッションの内容が「いずれも日本発のエビデンスとして国際ガイドラインに反映される可能性がある」と期待している。

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