「留学速報」University of Arizona College of Medicine, UA Sarver Heart Center


Sarver Heart Center, CPR グループ

 我々が今回お世話になったのは、Gordon A. Ewy 先生、Karl B. Kern 先生を中心とする Sarver Heart Center の CPR グループです。ブタを用いた動物実験を行う実験担当グループと、実際に循環器内科医として臨床を行っている臨床グループとが役割分担することで基礎的な検討と臨床研究の両方が可能となっています。実験は、Sarver Heart Center内の動物実験施設でRonald W. Hilwig 先生と3名のテクニシャンが中心となって行っています。Hilwig 先生は獣医師の資格を持った退役軍人で、長年このグループの動物実験を手掛けており、その成果を “Circulation” をはじめ多くの一流雑誌に報告されています。テクニシャンはアリゾナ大学の学生で、現在は生理学を専攻しておりますが、全員医学部を目指し勉強中でした。グループ全体が和気藹々とした明るい雰囲気で、冗談(本場のアメリカンジョーク)で笑いの絶えないグループでした。

実験用のブタ君

 実験は主にブタを用いて行われていましたが、動物実験の経験が全くない私たちは渡米前に動物実験を行うにあたり必要な知識を勉強し、IACUC (Institutional Animal Care and Utilization Committee) の試験に合格する必要がありました。ネット上で行われる試験に二人ともなんとか合格し、狂犬病のワクチンを接種した後に実験に参加させていただきました。

 実験内容としては、まず体重25kg〜30kg程度のブタに吸入麻酔をかけ気管挿管をして人工呼吸器管理をします。仰臥位にした後、心電図モニターを装着し、外頚動脈と内頚静脈からカットダウン法でシースを挿入します。シースから動脈圧ラインとスワンガンツカテーテルを挿入し血行動態を評価します。また、ピッグテイルカテーテルを挿入し左室造影で左室駆出率を測定したり、呼気終末炭酸ガス分圧の計測を行ったりもします。使用するデバイスは全て実際にヒトで使用するものと同一でした。実験プロトコールは様々でしたが、私たちが関わったプロトコールを紹介します。1つ目は、CPRの効果を急性心筋梗塞モデルと陳旧性心筋梗塞モデルで蘇生率や神経学的予後を比較検討するプロトコールでした。カテーテルを用いてブタの冠動脈前下行枝に金属のプラグを詰め、完全閉塞させた後にペーシング電極で心室細動を誘発します。12分間無治療で経過観察の後、CPRを施行し蘇生を試みる群(急性心筋梗塞モデル)と、プラグを詰めた2週間後に同様に心室細動を誘発しCPRを行う群(陳旧性心筋梗塞モデル)での比較を行いました。12分間は人工呼吸も停止させ、無治療で経過観察するのですが、CPRを行うとほぼ全例で蘇生することに驚きました。2つ目は、Eptifibatideという b/a 受容体阻害薬をCPR施行時に投与し、心筋の微小循環が改善するかを検討するものでした。微小循環の評価にはDoppler flow wireを用いて冠動脈血流予備能(CFR)を測定しました。CFRを測定する数百万円の機械がブタの実験のために自由に使える環境がすごいと思いました。その他、CPRによって蘇生に成功したブタを氷で34℃〜35℃に冷却し低体温にすることで血行動態やその後の生存率を検討したプロトコールなどにも関わらせていただきました。日本でも盛んに行われている蘇生後の低体温療法については、ブタなどの比較的大きな動物を用いた実験データはまだまだ少なく、アリゾナのデータが臨床に役立つデータとして近いうちに論文や学会で報告されるのが楽しみです。Hilwig 先生をはじめみんな親切に動物実験の手技を教えて下さり、プロトコールに慣れてくると私たちにほぼ全ての手技を任せていただきました。実験やその手技も勉強になりましたが、その実験プロトコールに関する論文の抄読会やグループのミーティングが知識の整理をするのに大変役立ちました。


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  1. はじめに 〜 アリゾナ州ツーソン
  2. アリゾナ大学について 〜 University of Arizona, Sarver Heart Center
  3. Sarver Heart Center, CPRグループ
  4. アフター5
  5. 日本のレジデント、アメリカのレジデント
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