1) 国立循環器病センターを中心とした基幹施設における登録データを解析した。国立病院機構等の27病院の急性心筋梗塞症発症登録1896例の解析から、 Killip分類による重症度分類と発症から入院までの時間解析により、入院までの遅れにより院内死亡率が高率となることが明らかとなった。その結果を基盤に、高度救急医療提供施設の適正配置数やあるべき体制を検討するため、厚生労働省人口統計死亡データの2次利用を行い、高次救急医療施設の地域でGISから算出した搬送時間と循環器系死亡率解析を企画した。
2) 搬送の遅れの解析から、遅延には、患者の決断の遅れ、搬送の遅れ(医師決断の遅れ、搬送方法による遅れ)があり、その実態を調査することで、治療開始までの遅れを短縮する方法を検討する必要がある。そこで市民の意識調査、医療従事者の意識調査、実際の罹患症例における発症から入院までの時間の遅れの解析を、無作為抽出等を使用し、アンケート及びインタビューにより調査した。この結果により、市民啓発で必要な項目を抽出し、循環器アラートシステムとして啓発方法を確立する。
3) 集約重点化に必要なハード面・ソフト面の検討として、これまでに確立したデジタル・ワイヤレス通信、携帯情報端末、位置情報システムを取り入れたモバイル・テレメディシン・システムの導入を検討した。救急車と3次救急施設を結ぶモデル地域を選定し、急性心筋梗塞や脳卒中を早期診断して適切な病院に搬送する体制と、救急救命士による病院前救護を支援するシステムとして次世代メディカル・コントロール(動画・音声及び心電図・血圧・血液酸素飽和度などの生体情報のリアルタイム伝送による医師による常時指示)体制の可能性を検討した。今後、モデル地域で導入することで診断・治療までの時間を短縮し、高度医療圏の拡大が可能か検討する。
4) 重症例への対応:超急性期予後の改善には、搬入後の再灌流療法、必要な臓器保護(低体温、補助循環)などの標準化と地域における必要施設数の提言が必要であり、多施設登録のためのプロトコール作成を行った。
5)院外心停止症例の救命率改善に向けた介入のため、観察研究で得られた心臓マッサージのみに単純化した蘇生法の有効性をもとに、独自の講習方法を作成しモデル地域における教育効果の検証を継続して実施している。今後、ウツタイン登録により検証する予定である。