早く病院に行こう! 心臓発作や心停止と脳卒中からあなたとあなたの大切な人を救うために


獨協医科大学 心臓・血管内科講師 菊地研


開催報告

3月28日(日)に本学創立30周年記念館関湊記念ホールで、市民公開講座『早く病院に行こう!〜心臓発作や心停止と脳卒中からあなたとあなたの大切な人を救うために〜』を開催しました。

当日はまだ肌寒い日でしたが、講師、インストラクター、スタッフおよび一般市民ら300名ほどの方々にご参加いただくことができました。

講演会会場

会場内が熱気に包まれる中、まず始めに理事長・学長 寺野彰先生から「自分が病気になっても我慢してしまい、状態が悪くなってから病院にかかるので、治療が遅れたり手遅れになったりする人が多いのです。近年、医療は飛躍的に進歩を遂げていますので、今日学ぶ経験を活かし、手遅れにならないように早めに受診していただきたい」との開会の挨拶がありました。

国立循環器病センター心臓血管内科部長 野々木宏先生

初めの講演で、国立循環器病センター心臓血管内科部長 野々木宏先生は『心臓発作や心停止、脳卒中の警告症状を学ぶ』と題して、「心臓発作や心停止、脳卒中で亡くなる人たちの中には、本人や周囲の人たちがどう行動すべきかを知っていれば、亡くならずにすむ人が多くいます。本人や周囲の人が警告症状に気づき、ただちに119番通報して病院へ行くことで、合併症を防いだり、減らしたり、命を救うこともできます」と話され、心臓発作や脳卒中になったときの症状を具体的に説明されました。胸部症状があっても救急車で受診する人が少ないこと、高齢者・女性・糖尿病の方は、症状が不明瞭なことがあることも付け加えられました。

ギネス記録への挑戦

次いで「大阪吹田市では、市長の協力のもと心臓発作・心停止での救命率世界一を目指し、心肺蘇生法(CPR)の普及に努めています」と話され、「昨年11月に米国テキサス州アーリントン(ダラスカウボーイズスタジアム)で日本の中学2年生に相当する8年生4,626人を対象にした大規模CPRトレーニングを行ったことで、これまでの2008年にノルウェーで記録された3,692人のギネス記録が更新された」ことを伝えられ、「栃木県も、リンク栃木ブレックスの日本一を追い越し、CPRのギネス記録へ挑戦しては」と世界一への挑戦を提案されました。

CPR実技講習

続いてのCPR実技講習では、「心臓振盪」についての説明の後、看護師・救命士によるインストラクターの指導で、参加者は成人・小児例への胸骨圧迫のみのCPRとAEDの使用方法を実習しました。

獨協医科大学 心臓・血管内科教授 井上晃男先生

2つ目の講演では、当講座教授 井上晃男先生は『今あなたの血管が危ない』と題して、血管の動脈硬化から心臓発作を発症するメカニズムをきれいな動画を用いて分かり易く説明されました。「プラークは血管のニキビ」との例えも分かり易く、そのプラークが血管内を飛んでいく実際の映像には会場中があっと驚きました。

また、動脈硬化の危険因子である高血圧症・高脂血症・糖尿病・・・を一つ一つ実例を用いて説明され、いくつかの健康食品の利点・欠点に関して詳細に説明され、ジョークを交えたお話には会場中が大爆笑していました。

その後の質疑応答では、参加者からは自らの病状に関する質問が次々と挙がり、それらに丁寧に答えた後、心疾患で困っている方へ対する当科の診療姿勢を伝えると、参加者から拍手が沸き起こりました。

小児・乳児のCPR実技講習

続いてのCPR実技講習では、「小児・乳児の窒息」それぞれについて当院看護主任 島田江津子さんと同 小森富美子さんからの説明の後、参加者は乳児例へのCPRと乳児と小児の窒息の対処の仕方を実習しました。

最後に、参加登録された方すべてに受講修了証が授与され、終了しました。

寺野学長をはじめ、今回のお手伝いいただいた方々にはこの誌面をお借りして、改めてお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。来年の開催に向けて、引き続きご協力をよろしくお願いいたします。なお、当日の写真や参加された方々に記載していただいたアンケートの結果は下記でご覧になることができます。

http://j-pulse.umin.jp/push3/seminar/tochigi-2010/index.html

獨協医科大学学内だより 平成22年5月号 No.430


AEDを使う心肺蘇生法 ホームページに戻る