救命してくれた方からのメール

件 名: 普段と変わらない月曜日の朝でした。
送信者: 製薬会社勤務 MR
送信日: 2005年1月

普段と変わらない月曜日の朝でした。

出勤前にニュースを見ると、その日の盛岡市の最低気温は氷点下10度を下回っており、かなり寒かったことを記憶しています。
外回り営業に出かけようと会社を出ると、ビルの館内が禁煙であるため、外でタバコを吸っている中年のサラリーマンを見かけました。立体駐車場から営業車が降りてくるのを待っている間  (am8:22) に 『事件』 が起こったのです。

『バタッ!!』 自分の後の方で、何かが落下したような、ものすごい音がしました。一瞬、何が起こったのか理解できなかったのですが、振り返ってみると、ビルの柱の陰から両足が投げ出された状態で人が倒れているのが見えました。

まさに字のごとく、「自分の目を疑いました」・・・。
状況を理解するのに何秒か経ってしまったのかも知れません。

「あっ、さっきのタバコを吸っていた男性が倒れたんだ!!」 と慌てて駆け寄り、BLS講習で習った通り 「大丈夫ですか、大丈夫ですか?」 と意識の確認。
意識がなかったため、すぐに携帯電話にて119番通報。

今思えば、かなり動揺していたにもかかわらず、「状況(タバコを吸っていた男性が倒れました・意識ありません)、現在地(住所)等」を的確に答えていたと思います。これも講習を受けていたからこそ、とっさに出来たのだろうと思いました。

また、電話口から 『マウス to マウスによる人工呼吸をして下さい』 と指示を受けましたが、やはり見ず知らずの男性で、口から唾液等が出ており、正直言って躊躇される状況でした (しかしながら、後から人工呼吸ができなったことで自責の念に駆られるのでした)。
BLS講習の中で、菊地先生から「とにかく心臓マッサージだけでいいから、やり続けなさい」との言葉を思い出し、必死に心臓マッサージをしたように記憶しております。

それからすぐに、救急車のサイレンの音が聞こえてきて 「良かった、助かった」 と、ほっとしたことを覚えています。
(後で聞いた話では、119番通報から2分という早さで現場に到着したそうです。)

そして救急隊の方が 『AEDによる除作動』 を実施。救急救命センターへ搬送して行きました。「あっ」 という間 (約5分) の出来事で、かなり動揺していたこともあり、何が起こって、どう行動したのか細かいことはよく思い出さないのが本当のところです。

また午前中は、その方の状態が気になって気になって仕事どころではなかったです。
命は?後遺症は?自分の判断正しかったのか?なぜ人工呼吸をしなかったのか?
心臓マッサージは的確だったのか?もっといい方法があったのでは・・・。
自問自答を繰り返し悶々としおりました。

ちょうどお昼前に、倒れた男性の同僚の方がから 「お陰さまで意識が戻ったようです」 と、現在の情況を教えて頂きました。
その言葉を聞いた時は、本当に胸を撫で下ろしたことを昨日のことのように覚えています。
それでも、やはり人工呼吸ができなかったことが心に引っかかっていて、諸手を挙げて喜べない、何かすっきりしない状況でした。

その2日後、会社にある女性が訪ねて来ました。
何と!その方の奥様だったのです!!!

涙ながらに感謝の言葉を話されている姿を目の当たりにして、「本人だけではなく、家族の方々も本当に喜ばれているのだなあ」 と、その時初めて 「救急救命連鎖」 のほんの一端ではありますが、関われて本当に良かったと実感すると同時に、胸のつかえが取れた気がしました。

今回、心室細動発症から、4分以内で除細動できたことがいい結果につながったのだろうと思います。
とにかく迅速な通報が一番で大事であり、あわせて完璧なCPRができれば、Betterなのだろうと感じました。
もし同じような機会に遭遇した時は、講習で身に付けたことが実践できればと思います。
また結果的には、後遺症も無く蘇生されましたが、「ポケットマスク」、もしくは 「携帯型フェイスシールド」 をいついかなる時でも使える状態にしておかなければならない、と強く反省致しました。

私の体験が、今後の心配蘇生法の普及 (BLS・ACLS講習) に少しでもお役に立てれば幸いに存じます。

岩手ECCトレーニングサイト
2004年11月 AHA BLSコース受講者

当ページは寄稿者の許可を得て掲載しています。


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