女性は心筋梗塞になると予後が悪い


2010年7月

獨協医科大学 心臓・血管内科講師 菊地研


なんだか穏やかではありませんね。「予後が悪い」って。

「悪い」という言葉だから、なんだか良くないことだって想像できますね。そうなのです。女性は心筋梗塞になると治り難かったり、重症になりやすいのです。

もともと女性は男性に比べて心筋梗塞になりにくいのです。ですが、心筋梗塞になると重症になりやすいのです。あまり重症だと死亡ってことにもなります。女性の場合、男性に比べて重症になる確率が3倍高いとも言われています。

女性の場合、発症してから病院を受診するまで時間がかかっているとの報告があります。そのことも原因で治療が遅れてしまうのです。

どうしてでしょう?

1つ目の理由として、女性の場合、症状が典型的でないということもあります。胸全体が苦しい、圧迫される、締め付けられるという典型的な症状でないことがあります。「下顎が苦しい」「どうも体調が悪い。冷や汗をかくけれど、どこも痛いところはない」という症状もあります。糖尿病を合併していると、全く症状がないということもあります。

2つ目の理由として、女性は我慢強いということもあります。男性に比べて我慢強いのです。あまり症状が強くないと我慢してしまうみたいです。「心臓発作も経験したけど、お産のときの方が辛かった」と退院する時におっしゃった患者さんもいます。さらに、夜間に具合が悪くなっても朝まで待ってから病院へ行こうと考えるみたいです。高学歴の方ほどそういう傾向があるみたいです。「だって、『救急車をタクシー代わりに使った』って言われたら嫌ですもの」と躊躇うみたいです。

そういう理由で病院を受診するのが遅くなるわけです。だから、治療が開始されるまでに随分と時間がかかっているわけです。

これをお読みになっている女性の皆さんにはこの重要性を分かっていただきたいのです。

「胸が苦しい」と自覚してから直ちに病院を受診してもらいたいのです。早ければ早いほど良いのです。強いて言うと、1時間以内に受診してほしいのです。救急車を呼んで病院へ搬送してもらいましょう。万が一、病院へ搬送される途中に心臓が止まっても救急救命士が救ってくれます。病院に到着すれば、心臓内科医がすぐに適切な処置を行い、緊急でのカテーテル治療をしてくれます。そうすると、無事に退院できる確率がグンと95%にまで高くなるのです。

早く病院を受診すれば、早く治療が受けられて無事に退院できて元通りの生活に戻れるわけです。

くれぐれも女性の方は、お気をつけください。

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