2007年1月27日 市民公開講座@獨協医科大学 獨協医科大学 附属病院 島田江津子 子どもはゲームセンターが大好きです。その中でも景品の取れるゲーム機は子どもに大人気となっています。最近ではゲーム機で取れる景品の種類も増え大人も夢中になってしまうほどです。しかし、このような楽しい場所でも危険は隠れているのです。 昨年10月にあるスーパーマーケットのゲームコーナーで、父親がクレーンゲームで取った景品のこんにゃくゼリーを2歳の幼児に与えたところ、のどに詰まらせてしまったという実際の事故が報道されました。一命は取りとめましたが低酸素状態が続いたため脳に後遺症が残る可能性がでてしまったようです。 こんにゃく入りゼリーの窒息事故は、過去2年間で少なくとも34件起こっており、そのうち8件は残念ながら死亡(小児5件、高齢者3件)しています。 こんにゃくゼリーは約10年前から注意を呼びかけている食べ物の一つなのです。 ゼリーでの事故はあまり聞いたことがないのに、なぜこんにゃくゼリーでは「のどに詰まらせた」といったような事故が起きてしまうのでしょう。 ゼリーとこんにゃくゼリーは一見よく似ていますが、性質はまったく違うものなのです。 また、ゼリーは体温程度の熱で溶けてしまいますが、こんにゃくゼリーは溶けません。 ではみなさん、ゼリーやこんにゃくゼリーはどのようにして食べますか? ・なかなか崩れない これらのことが気道閉塞の原因になってしまうのです。 では、閉塞はいつ起きやすいのか?ということですが、それはおとうさん、おかあさん、又は誰かと遊んでいるときに起きることが多いようです。 閉塞するとどうなってしまうのか。ということですが、閉塞を起こしてしまうと親指と他の指で首を鷲づかみにします。これは万国共通のサインと言われています。 では、窒息を発見した救助者は何をしたらよいのでしょう。 まず、子どもに「詰まったの?」と聞きます。 その方法は、 1.物が詰まった子どもの後ろに立つかあるいは膝立ちし、腕を子どもの腹部に回します。 2.片手で握りこぶしを作ります。 3.握ったこぶしを、子どものお腹の真ん中、へそのやや上、胸骨から離れたところにあてます。 4.もう一方の手でこぶしをつかみ、そのこぶしを子どものおなかに押し当て、早く、上向きに突きあげます。 5.異物がとれるか、意識がなくなるまで突き上げを続けます。 6.詰まりをとるための突き上げは、1回1回明確な動作を行います。 腹部突き上げを行っていてもなかなか異物が取れなければ子どもは意識を失ってしまいます。意識を失ってしまったら、119通報とAEDを取りに行くか誰かに持ってきてもらいます。 そして、救急車、AEDが到着するまで、救助者は何をしたらよいのか。ということですが、子どもが意識を失ってしまったら、即心臓マッサージを行います。心臓マッサージ30回、人工呼吸2回を続けます。 ここでの注意点ですが、口の中に異物が見えないのに指を入れて探さないようにしましょう。なぜならば、口の中・気道は狭いため、指を入れることで異物をさらに奥に押し込んでしまいます。口の中に異物が見えた時のみ異物を取り除きましょう。 今までは重症の気道閉塞をお話してきましたが、軽い気道閉塞の場合はどのような症状がでるのでしょう。 軽い気道閉塞の場合は、意識があり力強く咳き込める、息ができる、咳の途中にヒューヒューと音がします。 このような場合の救助者の行動は、子どもが咳き込んでいる場合は咳の邪魔をしないようにしましょう。自分で行っている咳は異物除去にとても有効です。 異物がなかなか取れないときは医者に連れて行くか、状態が悪くなるようであれば119番通報しましょう。 ここで注意をしていただきたいことを再度お話します。 口の中に異物が見えないのに、指を入れて探さないようにしましょう。なぜならば、口の中・気道は狭いため、指を入れることで異物をさらに奥に押し込んでしまいます。口の中に異物が見えたら取り除きましょう。 詰まった異物がとれた!場合ですが、腹部突き上げを行ったことによりお腹の中が傷ついている可能性がありますので、念のため病院に連れて行ってください。 今まで気道閉塞がおきてしまった時の対処法をお話してきましたが、何よりも大切なことは予防です。 その予防法は こんにゃくゼリーは乳幼児には与えない。 少し大きくなった幼児でも、おやつとして与える時は、事前に小さく切ることや、親の見ているところで食べさせるなどの工夫が必要。 学童期では、早食いしたり、ふざけながら食べない。 歩きながら、遊びながら食べない。 口に入れたままの会話をさせない。 一口で吸い込むような食べ方をしない。 よく噛む習慣をつけることです。 大人たちが十分注意していれば、ほとんどの事故は予防できるものです。 |