心臓突然死 予防への社会の取り組み


2010年5月

国立循環器病センター 心臓血管内科  野々木 宏


心臓突然死の予防は、早期発見が重要であり、最大の原因は急性心筋梗塞などの動脈硬化性疾患です。そのため予防対策は、生活習慣病対策が重要です。また。心臓発作やリスクの高い不整脈の発症時に早期に受診できる体制が必要です。今回は、その社会的な危機管理体制の構築の必要性についてお話しします。

心筋梗塞では、院外で2割ぐらいの方が突然死しています。胸部不快感が発生してから心停止が生じるまで1時間以内がほとんどです。また前触れとなる狭心症が6割ぐらいの方に見られます。早期に受診すれば間に合うことになります。

ところが、実際には心臓発作が起こってから専門病院に受診するまでに直接受診で4時間、医療機関を経てくる場合には12時間かかっています。『何も起こらなかったのがラッキーでしたね』 ということになります。救急車を使用して直接来院した場合が最短です。それでも3時間かかっています。

なぜでしょうか? 全国の市民の方に聞いてみました。

救急車を利用するという方は1割でした。利用しない理由は、『我慢する、かっこわるい、おおごとになる、迷惑、タクシー代わりに使うという批判、タクシーが早い、自分で受診する』 などが回答内容でした。実際にタクシーの中で突然死した方、自家用車を降りた直後に心停止した方がいます。救急車の中でも生じますが、救命士の方の適切な処置で助かった方が多いです。やはり救急車を利用することがベストといえます。

救急車を呼ぶことに躊躇する方は、救急安心センターを利用することがお勧めです。これは、モデル事業ですのでまだ全国全ての地域では使用できませんが、すでに稼働しているところでは実際に相談の結果で適切に救急車が利用できているようです。是非地域ごとに実施可能なようにして頂きたい点です。皆様方からのこれからの要望が大きいでしょう。

それでは、受け手側はどうでしょう。循環器の高度医療を実施するためには、24時間365日、日中と同様な体制が必要です。各病院にそれを求めるのは不可能です。それを実現するには、専門病院の集約化と交替制勤務が可能なように人員が必要です。現在の限られた資源と医療スタッフで実現するためには、広域でのネットワーク化と情報の共有が必要です。

地域を1つの病院として機能できるようにする必要があります。
これは地域ごとに事情が異なると思います。市民参加で市民の方々が自分たちの命は自分たちで守るということで行政や医療者と共同でシステムを作り上げる必要があります。そのためには医療学会は、市民の方々の意見を集約できる重要なものといえます。

それでは、データ共有化に、どのような工夫が可能でしょうか。現在救急車は、救急救命士が高度なトレーニングを受け適切な処置が可能となってきました。ただ、病院とのコンタクトはいまだに電話での1つ1つの病院との交渉です。受け入れが不能であれば、また同じ作業を繰り返し、時間が過ぎていきます。当然電話で全ての情報を伝えることは困難です。

皆様方が使用している携帯電話は優れものです。動画や写真は簡単に即座に相手に送れます。これはインターネットを利用していますので、応用は簡単です。救急車内の全ての情報がデジタル情報として相手先の病院や、他の場所とのデータ共有が即時に可能です。仮想病院として1つの空間を提供でき、搬送の遅れや病院選定の遅れの解消につながります。実際のシステムです。

標準化・汎用性をキーワードとして既存の機器を使用し、文庫本サイズの小型サーバーから携帯電話カードで標準的なインターネットを使用して、情報のセキュリティを強化の上、伝送します。病院側は通常のパソコンで、どこでも受けられるということになります。また病院間はテレビ会議として相手の顔が見える関係で受け入れ相談も可能です。

このシステムは、通常のインターネットを利用していますので、病院間ネットワークや診療所との連携にも拡大でき、地域を1つの病院として急性期診療や地域情報ネットワークとして活用できます。

受け手の病院の循環器医師は疲弊していますので、このシステム改善は不可欠であり急務です。地域の先生方が倒れない、あるいは去ってしまう前に支援が必要です。特に搬送時間がかかり、死亡率の高い地域での検討が急務です。

今後の社会の取り組みを期待しています。応援します。

当ページは野々木先生の許可を得て掲載しています。

 

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