パパ、お兄ちゃんが倒れた。サッカーボールが胸に当たった途端・・・

2009年1月25日@獨協医科大学 市民公開講座


宇都宮市東消防署 救急救命士   小杉 佳人


心臓震盪

みなさん、この1枚の写真を見てください。

注目してほしいのは、真ん中の少年です。

彼は野球の試合中に胸にボールがあたりその後、突然倒れてしまいました。

その日ちょうど観戦にきていた非番の救急救命士が直ちに1次救命処置を行い、彼の命を救ったのです。

適切にそして早急に対応をすれば、彼のようにほとんど後遺症を残さず元の生活が送れるのです。


さて、みなさん、この字「心臓震盪」を何と読むか知っていますか?

そうです、「しんぞうしんとう」です。

それでは、この字「脳震盪」は何と読むか知っていますか?

そうです、「のうしんとう」です。


よく似た2つの言葉ですが、この2つの症状には大変大きな違いがあります。


まず脳震盪ですが、これは頭部に衝撃を受けたことにより起きますが、数分でおさまる事が多いとされています。

そして適切な対処は、安静を保つことです。


一方、心臓震盪は胸部に衝撃を受けた事により心臓が停止してしまう状態です。

そして適切な対応は一刻も早く1次救命処置を開始することです事なのです。


一方は「静」の対応に対して、もう一方は「動」の対応と言うことになります。


心臓震盪は子供に多いと言われていますが、その原因は子供の胸郭は発育途上にあり、柔らかく前胸部への衝撃が心臓に伝わりやすいためだといわれています。


また、心臓震盪はスポーツ中におこることが多い事も知られていますが、子供同士の遊びの中や体罰などで起こることもあります。


では、心臓震盪を防ぐことは可能でしょうか?

心臓震盪をおこした多くの子供たちは、普段は元気で何の病気も無く、検診等でも異常がない場合が多いですが、スポーツ中に多いと言われていますので、スポーツ中に注意をするこで防げる可能性はあると思います。

昔、我々が子供の頃、野球の指導で「とり損ねたボールは胸に当てて止めろ」とよく言われましたが、心臓震盪のことを考えれば、あまり適切ではないのかもしれません。


われわれ大人が子供たちを心臓震盪から命を救うにはどうしたらいいのでしょうか?

1、安全な環境を作ることです。これは予防するという事でしょう。

2、AEDをスポーツ施設や学校などに設置をすることです。

3、直ちに近くにいる大人が1次救命処置を始められように普及啓発をすることです。


さて、今日話した心臓震盪ですが、最近特に注目をされています。

その理由は適切な対応つまりそばにいる人が、直ちに1次救命処置を行えば後遺症を残さず、元の生活ができるまでに回復をするからなのです。

子供たちの尊い命を救うのは、現場にいる皆さんなのです。

われわれ救急隊や病院の医師や看護師はそのお手伝いをするだけです。


現場でしか救えない命があるという事をみなさんにどうか知ってほしいのです。

当ページは小杉さんの許可を得て掲載しています。


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