心停止は搬送先の選定が重要に

獨協医科大学 心臓・血管内科 菊地 研
2010年8月


 

心停止から自己心拍が再開した心停止後症候群(PCAS)には集学的治療が推奨され、低体温療法と冠動脈カテーテル治療(PCI)が最も推奨されます。低体温療法は神経学的後遺症を軽減させ、PCIは原因である急性心筋梗塞への治療として生存率を上昇させます。

心停止が継続している場合でも、現場からCPRを継続させ、病院到着後にPCPSを装着する体外循環式CPR(ECPR)と、同時に開始される低体温療法とPCIを組み合わせた専門治療が必要となります。

このため、自己心拍が一旦再開した症例も心停止が継続している症例も、低体温療法、PCI、PCPSを適宜組み合わせた治療ができる施設へ搬送することが重要になります。

アメリカでは、蘇生および自己心拍再開後治療を担う「心臓蘇生センター(Cardiac Resuscitation Center:CRC)」を地域で包括的なシステムとして構築することを推奨しています。

日本では、メディカルコントロールで心停止例を救命救急センターに限らず直近の2次救急病院へ搬送するプロトコルを採用している地域が多いようです。しかしながら、救命救急センターへの搬送が神経学的後遺症を軽減させる要因であるとの報告もあります。

消防法が改正され治療施設の条件が開示された今、上記を踏まえて搬送先を選定することが重要になってくると思われます。


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