獨協医科大学 心臓・血管内科 菊地 研
心停止後症候群(PCAS: Post-Cardiac Arrest Syndrome)は、心停止から自己心拍が再開したあとに生じる極めて重篤な病態の総称として2008年に提唱され、改訂が目前の2010年国際コンセンサス(CoSTR)で重要な部分を占めると思われます。 PCASにより、自己心拍が一旦再開しても24時間以内に心筋機能不全が生じ、80%が院内で死亡してしまうのです。植物状態などの重度後遺症も含めると90%が不幸な結末になります。 突然心停止する主要な原因として心臓疾患が6割を占め、そのうち3分の2が急性心筋梗塞を代表とする冠動脈疾患なのです。それから推測してみてもお分かりですが、PCAS症例では冠動脈の狭窄〜閉塞病変を有していたのが5〜7割も占め、冠動脈カテーテル治療(PCI)を行うことで生存率が5倍高くなることが明らかになりました。 PCASの治療には6項目(表1)が挙げられ、これらを組み合わせた集中治療により、生存率が20〜30%改善します。とりわけ、脳神経学的後遺症を軽減させる低体温療法と、心停止の原因疾患を治療するPCIの組合せが重要となります。PCASでは心拍再開時に心電図異常が明らかでなくとも、既往歴や発症状況などを考慮して冠動脈造影を行う必要があり、PCIを視野に入れた救急治療が必要となるのです。 表1:PCASへの治療法
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