教育講演『AED』


第19回日本冠疾患学会学術集会
日時:平成17年12月9日〜10日
会場:グランキューブ大阪(大阪国際会議場)

獨協医科大学心血管・肺内科  菊地 研


EDは知っているけど、AED はピンとこない方もいらっしゃるでしょう。
バイアグラとかEDはテレビCMにも流れているので、まして一般市民にはそうなんでしょうね。

元気な身内の方が突然お亡くなりになるのは、その家族にとって「大事件」です。
現在、日本では毎日100人が心臓突然死で亡くなっています。
あえて例えるなら、日本人だけを乗せたジャンボジェット機が4日ごとに墜落しているのと同じことになります。
一般市民にこんなことを言うと、えっ?とびっくりします。
循環器医療に携わる皆さんはいかがでしょうか?
うちの病院に来れば助かるのに、って答えるでしょうか。

確かに、突然死の最大の原因である急性心筋梗塞症の致命率は10%未満で、9割以上の方は1ヵ月後には社会復帰されます。
ただし、これは院内に限っての治療成績です。
実は、病院にたどり着く前に半分以上の方がその場で突然死しているのです。
その原因は心室細動なのです。
治療は唯一、除細動のみです。

このため、一昨年から救急救命士による指示なし除細動が開始されましたが、救急隊が現場に到着するのは、ほとんどが倒れてから10分以上経過してからなのです。
心室細動が発生してから除細動が1分遅れるごとに救命率が約10%ずつ低下するため、ほとんど助けられないのが現状です。
救急救命士をただ待っていたのでは手遅れになるのです。

「事件は会議室で起こっているんじゃない、現場で起こっているんだ!」。

だからこそ、われわれは現場から始まる救急システムを築くよう努めましょう。
その場に居合わせた人が119番通報するとともに心肺蘇生法と除細動を行えるようにしてあげましょう。
そのときに使用するのがAEDなのです。
AEDは自動体外式除細動器のことで、心電図を自動的に解析してくれて、電気的除細動が必要かどうかを判断してくれるのです。

すべて音声メッセージで知らせてくれるので、その通りに除細動ボタンを押して、除細動すればいいだけなのです。
自動血圧計と同じくらい簡単で、小学生でも操作できます。

AED先進国のアメリカでは、警察官、消防士、警備員などの医療従事者でない職業人が、数時間の講習を受けてAEDで5分以内に除細動できることで救命率が劇的に改善しています。
さらに、その場に居合わせた人がAEDの講習を受けていなくとも、消火器のように設置してあるAEDを用いて除細動することで救命率が向上しています。
世界最大の広さと乗降客数を有するシカゴのオヘア国際空港での救命例が有名です。
公共施設や集客施設から学校や家庭へのAED設置がどんどん広がっています。

日本では、昨年の7月に一般市民によるAEDの使用を厚生労働省が認めました。
今年に入って、次々と愛・地球博や関西空港での救命例が報道されています。
その場に居合わせた人が設置してあるAEDで除細動を行ったことが、「事件解決」となったのです。
もっと多くの「事件」を解決する鍵は、AEDの設置とそれを使用できる人を増やすことです。

手始めに、自施設へAEDを設置して地域社会の一員として貢献しましょう。
同時に地域住民にAEDの必要性とその使用法を学んでもらいましょう。
自動血圧計は年間180万台売れているといいます。
AEDも自動血圧計並みに 「一家に1台」 普及すると、心臓突然死の4分の3が生じている自宅では、家族が 「事件」 を解決できるようになります。
それには、少なくとも一般市民にとってAEDがEDよりピンとくるようになっている必要がありますね。

当ページは第19回日本冠疾患学会学術集会の抄録を、
許可を得て掲載しています。

 AED
自動体外式除細動器
Autmated External Defibrillator
心臓の心室細動の際に電気ショックを与え(電気的除細動)、心臓の働きを戻すことを試みる医療機器。
 (電気的)除細動
心室細動などの不正脈が生じた心筋に電気ショックを与え、正しいリズムを回復させること。
AEDの操作方法は
とっても簡単です!

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