岩手医科大学第二内科 菊地 研 暮らしを大事にする生き方は、暮らしの順調さを喜ぶとともに、そこに危うさもあることを感じ取ることが出発点です。 万が一、心臓発作で心臓が突然止まったときには、救急隊員を待つだけでは手遅れになります。そのままにしていると、4分後には脳細胞が死んでしまいます。日本の救急隊員は平均6分で駆けつけてくれますが、この僅かな2分間が生死を決める大きな差なのです。 そのため、「いのち」を救う下準備として心肺蘇生法を覚えておく必要があります。 市民の誰もが容易にできるように、心肺蘇生法は非常に簡単なものに作りなおされました。 1 --- 倒れている成人をみたら、意識があるかどうか確かめます。 2 --- 意識がなければ、協力者を求めて、直ちに救急隊へ通報します。 3 --- あご先を挙げて空気の通り道を確保しながら、自発呼吸があるかどうかを確認します。 4 --- 自発呼吸がなければ、人工呼吸を行います。 口と口をあわせて2秒かけて軽く胸がふくらむ程度に2回吹き込みます。 5 --- この2回の人工呼吸に反応して、息をするか、咳をするか、体を動かすかという 「血液循環のサイン」 の有無をみます。
これがなければ、心臓が停止していると判断します。 6 --- 血液循環のサインがなければ、心臓マッサージを行います。 左右の乳首を結んだ線上の胸部中央に自分の片手を置き、もう一方の手を重ねて指を組み、手がそこからずれないようにし、肘をまっすぐに伸ばして自分の体重をかけるようにして、3.5-5cm圧迫します。 7 --- 人工呼吸2回、心臓マッサージ15回を1サイクルとして、1分間に4サイクル行います。
自分一人で行うときも、協力者がいて二人で行うときも同じです。 岩手県では1993年から「県民運動としての心肺蘇生法普及事業」を開始し、全国に先駆けて県内で統一した心肺蘇生法の普及を図ってきました。 倒れた人のそばに居合わせた人が心肺蘇生法を行うなど、同じ地域で暮らす人たちがお互いに助け合って行う救命救急システムが頼りになるのです。
岩手日報 2002年12月24日 |