一次救命処置 〜職場で突然人が倒れたら〜 胸骨圧迫心臓マッサージだけでも有効


2008年6月9日@栃木県労災保険指定医協会 特別講演


獨協医科大学  心血管・肺内科 講師   菊地 研


職場で突然人が倒れるのを目撃した場合は、一般市民の皆さんは下記の2つのことを行ってください。

(1) 119番通報する。
(2) 胸部の中央を強く、速く押す。

その人が助かる唯一の方法なのです。ためらわず、怖がらず、実施してください。

実は、職場、公共の場、さらには自宅で心停止を起こした人のうち、心肺蘇生法(CPR)をしてもらえた人は、残念なことに1/3に満たないのです。その場に居合わせた人の多くは、倒れた人に何かを行うことで状態を悪化させるのではないかと心配していました。倒れた人の口に自分の口を接触させるため、「マウス・トゥ・マウス」人工呼吸を含むCPRを躊躇していました。上手く人工呼吸できないのではないかと不安を感じていました。

そんな中、胸骨圧迫心臓マッサージのみのCPRを支持する研究結果が、東京大阪から世界に向け報告されました。自宅、職場または公共の場で起こった緊急事態では、胸骨圧迫心臓マッサージのみのCPRが、従来のCPRと同等に有効であるというものでした。

このため、2008年4月にCPR国際ガイドラインに強い影響力を持つアメリカ心臓協会(AHA)は、胸骨圧迫心臓マッサージのみのCPRを「ハンズオンリーCPR」という名称で一般市民向けに発信しました。

「手だけ」用いるCPRという意味で、口を用いた人工呼吸はせずに両手で胸骨圧迫心臓マッサージのみ行う、この「ハンズオンリーCPR」を積極的に推奨していくというものです。

CPRのトレーニングを受けていない人も、ためらわず、怖がらず、実施してほしいのです。どんなCPRであっても、しないよりはましなのです。このハンズオンリーCPRを行うことが助かる唯一の方法なのです。AEDが到着して使える状態になるまで、もしくは救急隊が傷病者のケアを引き継ぐまで、ハンズオンリーCPRを継続します。

もちろん従来のCPRは引き続き推奨します。トレーニングを受けることも引き続き奨励します。最良のCPRは人工呼吸と胸骨圧迫をうまく組み合わせることですから、2005年ガイドラインに準拠した胸骨圧迫と人工呼吸の組み合わせを30:2の比で行うCPRは最適です。

このため、CPRのトレーニングを積んだ方なら、状況に応じて、胸骨圧迫と人工呼吸の組み合わせを30:2の比で行うCPRか、ハンズオンリーCPRのいずれかを行います。

突然人が倒れるのを目撃したときには、その場に居合わせた皆さんに胸骨圧迫をしてほしいのです。ためらわず、怖がらず、実施してほしいのです。

ハンズオンリーCPRを行うことで多くの命が救われるのです。是非そのことを知ってほしいのです。

当ページは菊地先生の許可を得て掲載しています。

 大阪での研究報告:
J-PULSE
 ハンズオンリーCPR:
心肺蘇生法に関するAHA Advisory Statement
JCS Newsletter
Vol.32 (2008.4.8)
 AHA発表資料:
ハンズオンリーCPR(この資料の著作権・版権はAHAが保有しています)

・プレスリリース
ハンズオンリーCPRプレスリリース (PDF 216KB)
・一般市民向け資料
ハンズオンリーCPRプレスリリース (PDF 135KB)
・医療従事者向け資料
ハンズオンリーCPRプレスリリース (PDF 203KB)
 CPRトレーニング:
日本循環器学会
BLS・ACLS講習会情報

AEDを使う心肺蘇生法 ホームページに戻る