私たちの目指すところ

主任研究者 野々木 宏


1 心臓発作の現状を理解しましょう

心臓発作(急性心筋梗塞が代表的)は、専門病院へ入院すると治療方法の進歩により治療成績は良好で、最近では死亡する率は5%以下となってまいりました。

ところが、心筋梗塞の死亡率の全体は30%近くあり、その半数以上は院外での死亡です。

すなわち病院へ到着するまでに死亡しています。大多数は発病から1時間以内に突然亡くなっています。多くは心停止時に心室細動が生じていると考えられます。


2 救命には傍にいる方の助けが必要です

院外で突然心停止になったときには、救命の連鎖と呼ばれる一連の行為が時間の遅れなく実行される必要があります。救命の連鎖には、迅速な通報、心肺蘇生法の迅速な開始、迅速な電気的除細動の適用、迅速な専門的な治療の4つからなります。

特に前半の3つは一次救命処置と呼ばれ、一般の方から医療従事者まで誰でも実施可能です。心室細動の唯一の救命方法は電気的除細動であり、救命率をあげるためには、発見すれば早期に通報し心肺蘇生法を実施しながら電気的除細動器の到着を待つ必要があります。

院外では心停止から5分以内、院内では3分以内の除細動の適用が推奨されています。それには医療従事者(院内では医師、院外では救急救命士)による通常の手動式電気的除細動器の適用では達成ができません。

傍に居る人が、設置された自動体外式除細動器(AED)を使用することで達成ができることです。


3 AEDは誰でも使用が可能となりました

2004年に厚生労働省は、非医療従事者による自動体外式除細動器(AED)使用を認可しました。

そのため国立循環器病センターは、率先してその普及にあたり、適切な場所への設置、講習会を実施し救命の連鎖を確立することが使命であり、厚生労働科学研究費により、AEDの普及とその効果の検証をテーマとして班研究(主任研究者:野々木 宏)が開始され、普及対策とその効果の検証を国際標準とされるウツタイン登録を使用して行うことになりました。

院内心停止例への対応とともに広くその普及をアピールすることが目的です。


4 AEDの診療の中での位置づけ

AEDは非医療従事者を含め誰でも即時に使用が可能であることから、院外、院内を問わず使用が可能です。

音声ガイドに従えば簡単に操作ができますので、講習を受けることは必修ではありません。ただ、一度でも講習を受け、操作方法や心肺蘇生法を学んでおければ安心して自信を持って応急処置が可能と思います。

多くの方が講習会を受けられ、心肺蘇生法とAEDの扱い方に慣れていただき、一人でも多くのかたを救命可能となることを望んでやみません。


5 AEDと簡単な心肺蘇生法の講習

本研究班では、国内で市販されている3種類のAEDの練習機を多数用意し、トレーニング実施施設へ貸し出しを行っています。

また、国立循環器病センター各病棟のエレベーターホールを中心に14台のAEDを設置致しました。

最近、トレーニングを受けた看護師によるAED使用により、国立循環器病センター内で倒れた方を後遺症なく救命できました。多くの方々に、心肺蘇生法を実施していただけるように、簡単な方法(心臓マッサージのみ)の導入を米国アリゾナ大学のチームと共同して導入致しました。

今後、ビデオ教材やキャンペーンにより広く理解をいただくように活動を開始します。

ご理解いただき、突然倒れた人の救命に共に立ち上がりましょう。