獨協医科大学 心臓・血管内科 准教授 菊地 研
(日本循環器学会 循環器救急医療委員会/蘇生教育小委員会)
CPR(心肺蘇生法)は、ABCとしてAirway(気道確保)→Breathing(人工呼吸)→Compressions(胸骨圧迫)が50年間行われてきましたが、2010年に改訂した「心肺蘇生と緊急心血管治療のためのガイドライン」では「C-A-B」が新たに推奨されました。この「C-A-B」手順はCompressions(胸骨圧迫)→Airway(気道確保)→Breathing(人工呼吸)となり、最も重要で最も簡単な胸骨圧迫から開始することになります。これによりCPRを開始する時の「障壁」も取り除かれました。今回の変更はCPRをさらに簡略化させ、市民によるバイスタンダーCPRを増加させることを目的とし、より多くの命を救うことを究極の目標としています。
医療従事者が行うBLSとACLSのCPRアルゴリズムもさらに簡略化され、有効な胸骨圧迫とその中断を最小限にとどめる「良質なCPR」が前回から引き続き強調されています。これに繋がる自己心拍が再開した後の心停止後ケアには包括化・体系化された集学的な専門的治療が推奨され、低体温療法や冠動脈カテーテル治療(PCI)などが含まれます。急性冠症候群(ACS)では、発症から再灌流までの時間をさらに短縮するために、院外12誘導心電図の実施とその伝送が病院前救護体制に重要とされ、地域での医療連携システムの強化が推奨されています。